USスチール騒動。鉄鋼は過剰設備への対応が重い課題

昨日の続きで、世界の鉄鋼業界についてです。

 

世界の鉄鋼生産は2000年に8.5億トンだったものが、2023年には18.9億トンと2.2倍になっています。世界の鉄鋼生産の約6割に当たる11.2億トンを中国が担っています。2位がインドの1.4億トン、3位が日本で8700万トン、4位がアメリカの8100万トン、5位がロシアで7600万トンです。(世界鉄鋼協会のWebサイトより)

 

会社別の粗鋼生産量をみると、1位が中国のChina Baowu Group(宝武鋼鉄集団)の1億3千万トンです。全世界生産量の7%を占めます。2位にルクセンブルグのArcelorMittal、4位に日本製鉄、7位に韓国のPOSCO Holdingsが入っていますが、トップ10のうち7社が中国企業です。

 

世界トップ50のリストをみると、中国企業が28社です。中国という国の凄みを感じます。

日本ではJFEスチールが13位に入っています。日本勢は日本製鉄とJFEの2社だけです。

アメリカ勢は、日本製鉄との合併がとん挫したUSスチールが1600万トン足らずで世界23位、Nucor Corporationが2100万トンで15位、USスチールを買収する意向があるCleveland-Cliffsが22位、新興のSteel Dynamics, Inc.が43位です。

 

ここで大きな問題なのは、中国に過剰な生産能力があることで、世界の鉄鋼生産能力は2023年現在で24.4億トンあるということです。つまり能力24.4-生産18.9=5.5億トンの設備過剰が存在しているのです。

鉄鋼消費量を落としているのも中国です。2020年に10.09億トンの鉄鋼を消費した中国ですが、不動産不況などの影響もあって2023年は8.96億トンに減少しています。

 

今後も鉄鋼の余剰は続くものと予想されており、業界全体をみると厳しい状況は続きます。技術力のある企業間での連携がより重要になってきます。