トランプ大統領による知性に欠けるポピュリズムでアメリカの分断が際立ってきました。
そもそも、アメリカが統一された均質な国家だったことではないので、分断があることは当然とは思います。しかし、あまりに分断が強化されることは米国という国の存続が危うくなります。事実上の内戦状態に移行することすら、夢物語ではなくなってきました。
アメリカの分断を象徴したのが、2012年の「トレイボン・マーティン射殺事件」です。

「トレイボン・マーティン射殺事件」は、フロリダ州で当時17歳(高校2年生)のアフリカ系黒人のトレイボン・マーティンを、28歳のヒスパニック系の自警団団員ジョージ・ジマーマンが射殺した事件です。
ジマーマンは数時間の尋問のみで釈放され、裁判では正当防衛が認められて無罪となりました。
マーティンは武器を携行しておらず、フードのついたパーカーを着てコンビニから自宅に帰る途中でした。ジマーマンがマーティンに発砲した理由は「フードを被って歩いている黒人は怪しい」と思い、ひょっとすると「自分が殺されるかもしれない」という恐怖を感じたという理由でした。それでも、フロリダ州の州法で「正当防衛」が認められたわけです。
当時のオバマ大統領は、フロリダ州裁判所でのジマーマンの無罪判決に対して、「少年は、35年前の自分だったかもしれない」と語りました。
さらに、「私を含め、多くの黒人はデパートで買い物する時、後をつけられる経験を持つ」、「多くの黒人は通りを渡っている時、車のドアがロックされる音を聴いた体験も持つだろう」。「私も、少なくとも上院議員になる前、同じような目にあった」と付け加えました。
そのうえで、フロリダ州の正規の司法制度の下で決定したことであり、その責任は州政府が持つとして、大統領の権限を執行することはありませんでした。
13年の時を経て、トランプ大統領の振る舞いには不満が募りますが、一方でオバマ元大統領の忍耐にもいらだちが残ります。施政者に求められる中庸とはどんなものなんでしょうか?