EBITDA有利子負債倍率 マイナス/マイナスのとき

 ローカルベンチマーク(略称:ロカベン)とは、企業の経営状態の把握、いわゆる「企業の健康診断」を行うツールです。☞ 経済産業省 ローカルベンチマーク

 

ロカベンでは、財務情報を6つの指標(持続性・収益性・生産性・健全性・効率性・安全性)によって分析し、非財務情報を4つの視点(経営者・事業・利害関係者・内部管理体制)によって把握して「企業経営の見える化」を行う。企業の「稼ぐ力」の源泉がどこにあるかを明確にすることで、経営者に「気づき」を与え、経営の改善を促進することが目的です。

 

経済産業書 ローカルベンチマーク
経済産業書 ローカルベンチマーク

さて、財務情報から健全性を評価するのに、「EBITDA有利子負債倍率」という指標を使っています。

 

EBITDA有利子負債倍率=(借入金-現預金)÷(営業利益+減価償却費)です。

 

分子の(借入金-現預金)がEBITDAです。

EはEarningsで”利益”です。BITDAのBはBefore。ITはInterest Taxesで利益に係る税金、DAはDepreciationとAmortizationでそれぞれ有形固定産と無形固定資産の減価償却費のことです。EBITDAはその企業が1年間に稼いだ金額を表します。

 

分母の(借入金-現預金)は企業の実質的な借金の額を表します。

 

借金を1年間に稼いだ金額で割って倍率を求めます。稼ぐ力の何倍の借金があるのか、今ある借金は何年で返せるのか、というのがEBITDA有利子負債倍率です。したがって、数字が低いほうが財務内容はよくなります。

ロカベンシートの実例ですが、観光業の場合はEBITDA有利子負債倍率が2.5倍以下が5段階で最も良く、8.9倍以下、19.5倍以下と続き68.2倍以上は最も悪い評価になります。

 

ところが、EBITDA有利子負債倍率にはちょっと困ったことがあります。

分子の(借入金-現預金)がマイナスとなる企業、つまり実質無借金の企業の場合です。この企業がある年に営業損失を出して、分母のEBITDA(営業利益+減価償却費)がマイナスになった場合です。ロカベンシートでは、単純に計算してしまうと、EBITDA有利子負債倍率は、マイナス÷マイナスでプラスになるのです。

 

そもそも無借金なので、仮に何かの事情で営業損失を出したとしても健全性が損なわれているわけではありません。ロカベンシートでは、分子がマイナスだと点数は5点(最高点です)となるので問題ないのですが、算出結果がプラスで○○倍と表示されるので、ちょっと残念です。