脱同族経営は難しいか?ヨーカドー創業者・伊藤雅俊氏が亡くなった

先日、セブン&アイHDの伊藤雅俊名誉会長が亡くなりました。イトーヨーカドー創業者で、98歳でした。 

 

伊藤雅俊氏が亡くなったことは、98歳という年齢を含めて驚きはありません。3月9日にセブン&アイHDが既存のイトーヨーカドー店舗の2割を閉鎖するという発表がありましたが、創業者といっても関係はないと思っていました。ちょっと驚いたのは、4月1日付けで雅俊氏の次男・伊藤順朗氏がセブン&アイHDの代表取締役(専務)に昇格するという発表でした。

 

伊藤雅俊 イトーヨーカドー創業者
伊藤雅俊 イトーヨーカドー創業者

伊藤雅俊氏が日本を代表する名経営者の一人であることは間違いありません。

雅俊氏は、終戦後、叔父(母の弟)が大正時代に創業して、北千住で兄が営んでいた羊華堂という洋品店の仕事を手伝います。昭和31年に社長だった兄が病死したことから、雅俊氏がこの経営を引き継ぎます。 

 

この羊華堂から発展したイトーヨーカドーは年商1兆円を超える総合小売業となり、セブンイレブンなどグローバルなコンビニ事業、西武・そごうの百貨店事業、その他の食品事業を含むセブン&アイHDの連結売上高は7兆円近くになっています。

 

さて、伊藤雅俊氏が名経営者とされる一つの要因が、セブン&アイを同族企業・世襲企業にしなかったことでした。

2002年に長男で専務だった裕久氏を引かせて、セブン-イレブン・ジャパンを立ち上げた鈴木敏文に会長兼CEOとして全経営を任せます。雅俊氏は経営に関与しない「漬物石」となって、世襲問題を綺麗に解消したと思われていました

 

その後のセブン&アイですが、2016年に鈴木敏文氏が取締役会の統治に絡んで辞任します。詳しい背景や理由は不明ですが、創業家との軋轢があったとされています。また同時に取締役となっていた鈴木氏の長男・康弘氏が辞任しています。

 

そして、今回の人事で伊藤雅俊氏の次男・順朗氏が代表取締役に就任します。順朗氏はセブン&アイHD株式の8%を保有する伊藤家の資産管理会社の代表取締役でもあります。また、亡くなった雅俊氏も1.9%の株式を保有していましたから、伊藤家では今でも時価総額5.6兆円のセブン&アイの10%以上を所有していると思われます。

 

なかなか脱同族経営・世襲経営は難しいという実例なのかぁと思います。まさか「ラスト・エンペラー」にはならないとは思いますが、祖業であるイトーヨーカドーのリストラが発表された直後だけに、ちょっと気にかかります。 

 

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