ポストコロナには萩焼の侘び。工業品統計のおはなし

明治の初めには山口県は全国の陶磁器生産の5%を占めていました。

 

山口県は毛利の時代から萩焼の伝統があり、幕末には酒瓶や薬瓶(小野田の硫酸瓶も有名)など磁器生産も盛んになりました。明治のはじめには、愛知・岐阜・京都に次いで、佐賀県と並ぶ陶磁器生産の集積地でした。現在、山口県の陶磁器生産は国内の0.1%にも達せず、萩焼など食器に限っても1%にも遠く及びません。

 

萩焼
萩焼

工業品統計で食卓用・ちゅう房用陶磁器製造業の出荷額は453億円。都道府県別では、岐阜県(美濃焼)が1位で2019年の出荷額は約229億円とほぼ1/2です。

 

以下、佐賀県(有田焼)64億円、長崎県(波佐見焼)49億円、三重県(万古焼)35億円、愛知県(瀬戸焼)18億円・・・と続いて、山口県は12位で出荷額は約3.4億円でした。

 

一瞬、なるほどと思ったのですが、実感と異なります。萩焼の窯元だけでも萩市や長門市に50以上はありますから、3.4億円という金額はおかしいですね。

 

謎解きは、工業品統計は従業者4人以上の事業所が対象ということです。山口県には従業員4人以上の事業所は9しかありません。岐阜県には166、佐賀県には73もあります。

一方で、i-タウンページの陶磁器製造の登録数は、岐阜県394者、佐賀県263者に対して、山口県は90者です。もちろん、タウンページが全ての事業者を網羅していないのですが、岐阜県は166/394=42%、佐賀県は73/263=28%が4人以上の事業所で、山口県は10%という試算になります。

 

山口県の食卓用・ちゅう房用陶磁器製造業は、4人未満の小さな事業所(ほとんど個人)がおこなっているということです。食器などの陶磁器は、プレス機やトンネル窯を使って大量生産するものと、萩焼の窯元のように手づくりのものがあるわけで、工業品統計では区別がつきにくいですね。

  

山口県の陶磁器製造は近代化・工業化に乗り遅れて衰退したと単純にみるのは間違いなんだろうと思います。統計にあらわれない優れたものづくりをしているとも言えるわけです。

コロナ騒動で小さな窯元の経営には陰りがみえています。ポストコロナの旅では、優しい風合いの萩焼の器を手に取ってみてはいかがでしょうか?

 

おいでませ、山口へ!