マケドニア・モンゴル・ロシア、兵站の維持は重要

ロシアがウクライナ侵略で苦戦しているのは兵站がうまくいかないからだそうです。

 

兵站とは、「戦争を遂行するために必要な人的・物的戦闘力を維持し増強して提供すること」とあります。確かに、ロシアは前線に適切なレベルの人員や物資を必要な量だけ給することができていないように思われます。それにしても、主な戦場はロシア国境から僅かに50㎞くらいのところですから、こんな距離で兵站が確保できないのは問題です。

 

アレクサンドロス3世の最大版図
アレクサンドロス3世の最大版図

紀元前のマケドニアの王アレクサンドロス3世は東方に遠征してインドの西端までの広大な領土を得ました。当時の世界観からすれば、この外に国は無いので、世界征服を成し遂げたわけです。

 

この時代に1万㎞を超える侵攻をしたマケドニア軍の兵站の基本は、「自分の物は自分で持っていく」です。

歩兵も騎馬も、それぞれ武器・食料・生活道具・衣類・テント・薬など1人当り40kg以上の物資を背負っていくのだそうです。食料は、小麦、大麦、キビなどの乾燥穀物・乾燥肉・乾燥果実などを持っていき、後は現地調達したもので賄ったそうです。

 

モンゴル帝国の最大版図
モンゴル帝国の最大版図

13世紀のモンゴル帝国の場合は、西は現在のロシア沿海州・朝鮮半島から、東は東ヨーロッパ・ポーランドあたりまでの広大な領域に侵攻して支配しました。

 

モンゴル軍の兵站はアウルク(奥魯・おうろ)と呼ばれる後方基地で成り立ちます。遊牧民族であるモンゴルは、戦争に家族を同伴します。戦線の後ろに兵士の家族が居住する集落ごとついていくわけです。ちょっと、農耕民族には考え難いですよね。

 

さて、プーチンのロシアが兵站を気にしなかったのは、ウクライナがソ連時代は一つの国であり、親ロシア系の住民が今もたくさんいる。侵攻していくと、オセロの駒がひっくり返るように占領した人民がロシアに協力するはずだから、自国からの補給はそれほど必要ないと考えていたようです。しかし、実際にはロシアに寝返って協力するウクライナ市民が多くはなかったどころが、強く抵抗されたということです。

 

さて、ビジネスの世界でも兵站は重要です。新たな市場に乗り出すときに、商品やサービスの良さだけでは成功はおぼつきません。供給力・物流力・広告宣伝など兵站の整備は重要です。また、M&Aなどで事業拡大するときには、プーチンの誤解は反面教師になります。相手の会社を救済するようなつもりで合併統合しても、うまくはいかないものです。(イーロン・マスクのTwitter買収の行く末も注目です。)

 

戦争においてもビジネスでも軍備と兵站は両輪ですが、軍備と兵站だけでも戦争は勝てません。必要なのは軍備と兵站と規律の3つが揃うことだと言われます。最も重要なのは規律なのかも知れません。マケドニアやモンゴルにあってロシアに欠けていたものは、兵站以上に規律だったような気もします。