ドローンは90年前に軍事用に開発された

ウクライナの戦場で、いろいろなドローン=無人航空機が戦闘や偵察に使われています。

 

ドローンというと、4つの回転翼があるマルチコプター型を先ずは想像するのですが、戦場で使われているのは飛行機のような固定翼機も多いようです。GPSとカメラ(FPV)を使って、敵の位置や状況を把握して爆弾を落としたり、ときには自分で突っ込む自爆型攻撃をおこないます。軍事用ドローンは、他の武器より比較的安価なことから、近年の戦争では使われる頻度が高くなっています。

 

トルコ空軍 TB2
トルコ空軍 TB2

軍事用ドローンは観光や農業・建設業・運送業など民生用に開発されたものが軍事に転用されたもので、たいへん怪しからんと思うと誤解です。実際は、ドローンは元々軍事用途で開発されたものです。

 

アメリカのライト兄弟が飛行機での有人飛行をおこなったのは1903年のことです。飛行機は、1909年には飛行機は英仏海峡を横断できるほどに進歩し、1910年には日本でも初めての飛行がおこなわれました。

1914年にはじまった第一次世界大戦では、はじめは偵察用として、その後は戦闘機や爆撃機として飛行機は使われました。5年余りの大戦によって、飛行機の性能と信頼性は飛躍的に高まりました。

 

大戦を契機にして、戦争が地上戦から空中戦に変化して、航空機同士あるいは地上から航空機での攻撃がおこなわれるようになりました。このときに、実際に空中を動いている標的に向かって射撃訓練をおこないたいと思うのは当然です。

 

1931年にイギリスで標的機として、最初の無人航空機が開発されました。イギリスはこの無人標的機を「Queen Bee(女王蜂)」と呼びました。1936年にアメリカでも同じように無人標的機を開発した際に、イギリスの女王蜂に対抗して「Drone(雄バチ)」と名付けたのがドローンのはじまりです。

 

 

その後、ドローンは無人攻撃機としても開発がすすんでいきます。第二次世界大戦でアメリカはB-17爆撃機をベースにした無人爆撃機まで開発しています。なんと1944年のことです。

第二次大戦後も、ドローンは主に軍事利用を目的にして進化を続けていきました。

 

民生用ドローンというのは、インターネットやGPS、携帯電話などと同じく、軍事技術の民間転用というわけです。そして、大きな戦争がなかった近年には、この民生用ドローンの性能と信頼性が飛躍的に高まりました。

そして、民生用ドローンがそのまま軍事転用されているのが、ロシアとウクライナの戦場というわけです。これをどのように捉えるべきなのかは、悩ましいことです。技術者の倫理などという領域では収まりませんね。