グローリーホールからベンチカット:石灰石の採鉱法

美祢市に行くと石灰石の採鉱をしている鉱山がいくつもあります。

 

石灰石は石炭と並んで非金属鉱石の代表です。石炭は、日本では北部九州から山口県・北海道・常磐の3か所に偏在していますが、石灰石はほぼどこでも採れます。それでも、山口県の秋吉台~於福台は、福岡県の平尾台~香春と並ぶ、日本有数の石灰石鉱山です。

 

日本の大規模な石灰石鉱山の採鉱方式は、戦後の早い時期はグローリーホール方式でしたが、その後1960年代後半からはベンチカット方式へと変わっていきました。そのベンチカット方式の石灰石採鉱の典型例が美祢市の宇部興産・伊佐鉱山です。地理院地図で現在の写真と1975年頃の写真を貼り付けてみます。

 

ベンチカット方式は階段採掘法ともいわれます。水平なベンチ (階段) で採掘する方法です。一段の高さが10mくらいです。伊佐鉱山は写真でもわかるように、トップからは200m以上も採掘されていて、最下部には水が溜まっています。

 

ベンチカット方式は、採鉱効率を飛躍的に向上させたそうで、伊佐鉱山は1973年には年間に1300万トン近くを生産しました。1日に3万5千トン以上ですから、10tダンプ車で3500台分にもなります。

 

こんなにダンプを走らせるわけにはいかないので、美祢市の伊佐鉱山から宇部市の宇部興産工場まで専用道路を敷設しました。これがいわゆる興産道路です。全長28㎞余りの区間を、トリプルトレーラートラック1編成で105tを積んでピストン輸送をしていたそうです。

結構なダイナミックさです。


グローリーホール方式からベンチカット方式への変化については、三菱マテリアルさんのバーチャル工場見学が面白いので、貼り付けておきます。画面からリンクします。