「電気」という”もの”はない。電子の移動が電気で、電気は流れていないといけない。
電気は溜めること(とどめること)ができません。流れていなければ電気ではありません。蓄電池があるじゃないか?と言われますが、これは電池の負極側に電子を化学的に蓄えて充電して、正極側に移動させる(放電)ときに電気として取り出します。
早朝03:08に北海道の内陸で、最大震度7の大きな地震が発生しました。北海道で震度7の地震が発生したのは、観測史上初めてのことです。
これによって、北海道内全てが対象となる大停電となっています。
この停電は、電気の需給のアンバランスから来る「系統崩壊」というものが原因です。
流れていないと電気ではないと書きましたが、実は安定して一定の流れでないとなりません。
電気の流れが乱れると周波数が変わります。東日本の電機は50Hzですから機械はこれに合わせて調整されています。産業用機械で1Hzも周波数が変われば製品の品質はぐちゃぐちゃになります。
電気は、需要と供給がいつでも均等になるように調整されていることが、どうしても必要です。お日様任せで、勝手気ままに発電する太陽光発電が電力会社に嫌われる理由です。
今回の大停電のきっかけは、北海道最大(3基で165万kw)苫東厚真火力発電所が被災して発電機が止まってしまったことです。突然、需給のアンバランスがおこったので周波数が数Hzの幅で低下しました。
そうすると、近くの発電所が、自身のタービンが振動で壊れたり、巻き線加熱で切れたりすることを避けるために、自動的に系統から離脱します。すると、その近くの発電所も離脱して、ドミノ倒しになって、ついに全系統崩壊=ブラックアウトに至るというわけです。この場合、火力発電所だけでなく水力発電所も全て系統から離脱します。
復旧手段は、川の水の自然に流れで発電できる(自流式)水力発電所を立ち上げて、この少しの電力を元にして、その近くある発電所からを順次に立ち上げていきます。そのときも、需給のバランスをとりながらおこなう必要があります。北海道電力では、明朝までには全道の1/3で復電という計画ということで、比較的早く復旧していきそうです。
この復旧手順は、ブラックアウトになった場合はどこでも同じですから、首都直下地震がおこったときの東京では電力復旧までに1週間以上かかると思ったほうがいいでしょう。
もう一つ、今回の大停電が改めて教えているのは、原子力発電をほぼ停止している日本の電力には、安全余裕が非常に小さいということです。
地震前日の北海道電力の最大使用電力は374万kwに対して最大供給電力は414万kwでしたから、最大使用率は93%です。この状態で165万kwの苫東厚真が被災しました。当面の復電はしても、苫東厚真が稼働するまで電力使用を抑制することが必要になります。
言っても仕方ないのですが、停止中の泊原子力発電は207万kwです。
更に、北海道内の火力発電所はどこも老朽化しています。最も長く稼働している奈井江1号機は昭和43年からですから50年以上経っています。平成になって稼働開始(稼働から30年未満)したのは、苫東厚真3号機(70万kw)と知内2号機(35万kw)の2基だけです。発電予備力が脆弱であることは確かで、これは他の電力会社でも同じです。
☞ 2014/08/12 火力発電所の老朽化・・半分が耐用年数を超えている
会社がBCP(事業継続計画)を立てるときに、1週間程度の電力停止も盛り込んでおくということが必要かも知れません。