働くのは「はたをらくにする」ため

誰が言いだしたのかは知りませんが、うまいことをいうものだと思います。

 

ちょっと昨日の続きなんですが、「労働」という言葉にはちょっと苦しいイメージがあります。労働に相当する英語は、レーバー(labor)です。アメリカではメーデーではなく、9月の第1月曜日にレーバー・デーを祝います。レーバーには、無理やりに働かされているようなニュアンスがあります。労働が苦役というのは、主に西洋から来た感じ方です。

 

実は、明治になってレーバーという言葉が入ってきましたが、日本語には該当する単語がありません。そこで和製漢語としてつくられたのが「労働」です。「労い(ねぎらい)ながら働く(うごく)」とも読めますから、もっと積極的な活動という意味合いもありそうですが、やっぱりちょっと苦役感があります。

☞ 西周(にし あまね) 和製漢語で新しい学を開く(2016.5.28)

 

「労」は不思議な文字で本来は苦労して働くという意味ですが、労わる(いたわる)とか労う(ねぎらう)とか、思いやりや感謝を表す意味もあります。

「働」は中国の漢字にはなくて、日本でつくられた国字です。働くの「はた」はものが動く様子を示す擬態語「はたはた」「パタパタ」のことだそうです。つまり「はたらく」は動くという意味で、特に人が動くので人偏をつけました。

 

さて、働くは「傍を楽にする(はたをらくにする)」という意味だというのは、言葉遊びです。しかし、以前から多くの人が講話などで使っていて、金八先生なんかも言いそうです。うまいことを言うものだと感心もしますが、まぁ真実だとも思います。

 

何のために働くのか?という質問に対して、「生きるため」という答えは正しくなさそうです。現代においては、働かないで生きている人はいます。幸せかどうかは別ですが・・。

また「お金のために働く」というのも、”働く”と”お金を使う”との間に溝があります。働くという苦役を果たして、快楽を得るというわけではありません。

 

人は誰かのために働くことに、価値を見出し、喜びを感じるのだと思います。

メーデーのテーマになった「ディーセント・ワークの実現」”働き甲斐のある人間らしい仕事の実現”とは、「はたをらくにする」仕事を皆がしていくということなんでしょうね。