アコギは地名、リッパは仏教にそれぞれ由来

畠中恵(はたけなか めぐみ)さんの時代小説(ファンタジー小説)をたまに読みます。

 

畠中さんがどのくらい有名なのかはよく知りません。「しゃばけ」シリーズ、「つくもがみ」シリーズ、「若様組」シリーズなど、江戸時代や明治時代を舞台にした小説は、奇想天外で気楽に読めて楽しいです。畠中さんには珍しい現代を舞台にしたミステリーに「アコギなのかリッパなのか」という作品があります。

 

アコギなのかリッパなのか
アコギなのかリッパなのか

小説の内容とは関係なく「アコギ」と「リッパ」です。

 

「アコギ」とは、強欲であくどいという意味です。

ところであこぎっていったいなんだ?と思って調べてみたら、地名由来の言葉なんだそうです。(諸説あります)

 

今の三重県津市阿漕浦海岸に所縁があります。

このあたりの海は伊勢神宮の神域で古来から禁漁区でしたが、阿漕という名の漁師が密猟を繰り返して、大きな利益を得ます。ついに見つかった阿漕は、捕まって入江の沖に沈められます。

 

阿漕の霊はここで地獄の責めに苦しみ続けます。これを聞いた旅の僧が経を読んで阿漕を弔い、この入江が阿漕が浦と呼ばれるようになったということです。(この真逆の説もあります)

 

少し調べてみましたが、地名に由来する言葉というのは意外に少ないようです。


「リッパ」とは、非常にすぐれてどうどうとしてるという意味です。

こちらは、仏教由来の言葉なんだそうです。(諸説あります)

 

仏教で知恵を得ることを明(みょう)といい学問のことです。明(学問)には5つあり、内明(仏教学)、因明(論理学)、声明(文学)、医方明(医学)、工巧明(工学)とされます。

 

因明はインドで生まれた論理的思考法で、今でいうところの演繹法と三段論法を基礎に置く思考方法です。☞ 日本仏教学院「現代人の仏教教養講座」因明とは?

 

これが、唐の時代に三蔵法師によって中国に伝わり、遣唐使によって日本に伝わりました。因明で使われる手法が「立破(りゅうは)」で、論者の主張を立、敵者の主張を破として思考するものです。この立破が転じてリッパ(立派)になったというわけです。

 

仏教に由来する言葉のほうは、それこそ数多くあります。

「ありがとう(有難し)」、「挨拶(一拶一挨)」、「ふとん(蒲を編んだ敷物)」「接待(茶をふるまうこと)」、この他「暖簾」「普請」「行脚」「頭巾」・・・・。

 

人々が共通して使う言葉には、地名由来より仏教由来のほうが適していたということですね。