新聞にクローバック条項やマルス条項を導入する企業が増えているとの記事がありました。
二つの条項をまとめて、マルス・クローバック条項という場合もあり、クローバック条項だけでマルス条項も含むこともあるそうです。クローバック(claw back)は、claw:かぎつめで引き戻すことから回収や取り戻すという意味です。マルス(malus)は、ラテン語で悪事の意味で金銭的なペナルティを意味します。
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クローバック条項もマルス条項も、会社の役員が犯罪などの不祥事あるいは重大な過失によって会社に大きな損害を与えた場合の措置を定めたものです。
クローバック条項は、対象者の権利が確定した後に報酬を没収することです。マルス条項は権利が確定する前のインセンティブ報酬の没収です。
マルス条項は、未だ支払っていない報酬を没収(減額)するわけです。「報酬を3か月間20%減額する」といった内容ですから、条項の有る無しはともかく現在でもよく行われているように思います。
一方のクローバック条項は、既に支払った報酬を遡って返納させるという仕組みなので、かなりハードルが高いでしょう。予め契約を結んでいることが前提ですが、報酬を受け取った際に支払っている所得税などの処理は? 返納を受けた場合の法人税の処理は?といった問題もあります。
もちろん、クローバック条項を結ぶとすれば、生活給とはかけ離れて高額な報酬を受け取っている人だけが対象となります。その報酬を生活に充てているような人とクローバック条項を結び経営を付託したならば、非常に保守的な経営判断に終始して、会社の発展は望めません。
今後、マルス・クローバック条項は普及していくと言われますが、注意は必要です。