エルステッドはアンペア毎メートルになった

40年ちょっと前に会社に入って最初に触れた単位が「エルステッド(Öe)」でした。

 

エルステッド(ハンス・クリスチャン・エルステッド)は、デンマークの物理学者です。1820年にコペンハーゲン大学の教授をしていたエルステッドは、講義中に電池のスイッチを入れたり切ったりすると、方位磁針が動くことに気づきます。これが、電気と磁気の間に関係があるという最初の証拠になりました。その後、1931年にイギリスのファラデーが、コイルに磁石を近づけたり離したりすると、コイルに電流が流れることを発見します。誘導電流です。

 

VSM(振動試料型磁力測定器)
VSM(振動試料型磁力測定器)

さて、私の入った会社は、磁気記録用磁性粉末を製造していました。

製造する粉末は、用途や客先(テープメーカー)のよって、それぞれ磁力の規格が決まっています。VSMという装置で、粉末の磁力(保持力とか抗磁力とかいいます)を測定します。この磁力の単位がエルステッド(Öe)です。

 

オーディオテープのノーマルポジション用粉末は400Öe、ハイポジションなら600Öe、メタルポジションなら1200Öe、ビデオテープなら700Öe、磁気カードなら2800Öeとかになります。

 

数字が大きいほど磁力が強いので記録材としては優秀ですが、あまり強すぎると磁気ヘッドで記録すること、消したり上書きすることが困難になります。テープのような巻物ですと、記録の転写なども起こりますから、適当な磁力が必要です。

磁気カードや磁気ストライプ(銀行の通帳についている黒いテープ)であれば、消したり上書きしないので割合に強力な磁性粉末を使います。

 

エルステッド(Öe)は、CGS単位系の単位なので、1992年の新計量法で原則として使わないことになりました。実際には、およそ10年を掛けてSI単位系への移行がおこなわれました。

SI単位系では磁力の単位は、アンペア毎メートル(A/m)です。単位の変換は、1(Öe)が、4π×10^-3(A/m)です。

400Öeは、400÷4÷3.14×10^3=31.6kA/mとなりますが、慣れるまでは大変です。