最低賃金の引上げは地方経済の首を絞める

厚労省の中央最低賃金審議会が、2023年度の最低賃金を全国平均で時給1002円に引き上げる目安をまとめました。

 

答申通りに最低賃金が引き上げられると、現在888円の山口県は40円上がって928円になります。中小企業・小規模事業者の現実をみている中小企業診断士としては、最低賃金をこの水準まで上げるのは、政治的な思惑だけが先走っていて、働く人の幸福の拡大にはつながらない愚策と実感しています。

☞ 2022/07/31 2022年度、最低賃金の大幅な引上げはしないでほしい

 

山口県 棚田
山口県 棚田

働き方には多様性があります。労働生産性なんか考えなくてもよい働き方は、中小企業や小規模事業者にはたくさんあります。

 

働くことは文字通り「傍を楽にすること」であり、それに喜びを感じる働き方です。

あくせく売上高とか利益とか考えず、上司も部下も無く(つまりはパワハラなんか無縁)、子守や孫守りしながらでも仕事ができる職場が地方にはたくさんあります。

 

最低賃金の引上げは、現在の日本では※雇用(労働需要つまり労働者数)の減少につながります。このため、分母の労働者数が減るので、算出する付加価値額が多少減ったとしても労働生産性は見掛け上は上がります。しかし、付加価値額が減るので、最低賃金の引上げは経営上はマイナスです。

※ 労働需要に対して最低賃金が十分に低いと仮定すれば、最低賃金の上昇が労働供給の増加になるので雇用の増加になります。しかし、現在は、少なくとも私たちが接している地方の中小・小規模事業者とその雇用者においてはそうではありません。

 

労働生産性の向上についても、仕事の働きかけの対象がモノである大規模製造業では最低賃金の上昇は雇用の減少から、生産性の向上にプラスに見えるケースはあるでしょう。しかし、ヒトに働きかけるサービス業などでは、最低賃金の上昇によって労働生産性が改善(労働者が提供する労働の質が向上する)ということは考えにくいです。

 

労働生産性の低い会社・事業・産業は淘汰され、退場するべきだという有識者の方の意見もあります。しかし、どんなに素晴らしいテクノロジーを開発しても、それだけでは社会に貢献できません。商品が、消費者に届いて、実際に使ってもらってこそのことです。

 

変な例ですが、複数の地域で、ある新商品のシェア分析してみたら、駅前で配ったティッシュの数との相関が最も高かったなどということはよくあります。専門技術者によるハイテクノロジーな回路設計より、ティッシュを配るアルバイトさんの笑顔のほうが、実は本当の生産性は高かったのかも知れません。 淘汰されるべきは、有識者の方だったりします。