倫理の発達段階~ハインツのジレンマ

中学1年生の道徳で使われる題材に「ハインツのジレンマ」というのがあるそうです。 

 

ヨーロッパにハインツという男がいました。ハインツの妻が病気で死にかかっていました。医者は、彼女を救うためには、ただ一種類の特効薬しかないと言いました。 この特効薬は、同じ町に住んでいる医者によって開発されていました。それを作るのに、200ドルもかからないのに、2000ドルという値段をつけていました。 

ハインツは妻を救う特効薬を買うためにお金を借りようと、知人を何人もたずねましたが、 必要なお金の半分の1000ドルしか借りることができませんでした。

ハインツは、特効薬を作った医者に、「妻が死にかけているから、その特効薬を安く売ってくれませんか。それか、後払いにしてくれませんか。」と頼み込みました。

しかし、特効薬をつくった医者は「そんなことはできない。私は金をもうけるために薬をつくっているのだ。」と言いました。

ハインツは悩みましたが、病院に押し入り、薬を盗みました。 


ハインツはどれほどの罪に問われるでしょうか?それとも、無罪ですか?

 

ネタばらしをすると、この課題は判断が有罪か無罪かは、あまり関係ありません。判定するには情報が少なすぎます。この課題では、回答者の倫理の発達段階をみるのだそうです。

 

倫理の発達モデルにはいくつかありますが、コールバーグのモデルが有名です。倫理の発達段階を3レベル6段階に分けています。

第Ⅰレベル「前慣習」

第1段階「罰と服従志向」

第2段階「道具主義的相対主義者志向」

第Ⅱレベル「慣習」

第3段階「良い子志向」

第4段階「法と秩序志向」

第Ⅲレベル「後慣習」

第5段階「社会契約的遵法主義志向」

第6段階「普遍的な倫理原理志向」

 

例えば、ハインツの行動(盗み)を肯定する考えの場合の例です。

「ばれないように盗めばよい」というのが第1段階。

「妻がいないと困るから盗むのは仕方ない」が第2段階。

前慣習レベルは、子どもの段階です。

 

「妻を救うのは夫(ハインツ)の役目だ」というのが第3段階。

「いのちは何にも代えがたい」というのが第4段階。

慣習レベルは、未成年の段階です。

 

「妻のためにハインツには盗む義務がある」というのが第5段階。

「誰のためであろうと彼には盗む義務があった」というのが第6段階。

後慣習レベルは、成人の段階です。

 

盗みを奨励しているわけではないので、ご注意ください。

さて、立場を替えて、妻が夫の行動(盗み)を肯定する場合、特効薬を開発した医師の行動(特効薬を渡さない)を肯定する場合、などもいろいろな考え方がでてきそうです。