既存建物の断熱改修も大切~改正建築物省エネ法

2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、建築物の省エネの達成が必須です。

 

日本のエネルギー消費量の約3割(30%)が家庭と業務分野で占められます。この2分野は建物内での活動が主になるので、まとめて建築物分野といいます。建築物分野以外が70%ですが、20%強が運輸部門で、50%弱が産業部門です。建築物分野での省エネ効果を出すには、長期間がかかりますから、早めに着手していく必要があります。

 

昨年(2022年)6月に改正建築物省エネ法が公布されています。3年以内(2025年5月まで)に施行されます。

改正建築物省エネ法について、とりあえず改正法の概要を把握するには国交省のwebサイトなどを参照してください。

☞ 国交省webサイト「建築物省エネ法について」

 

カーボンニュートラルの達成には、炭素の吸収も必要ですから、森林の保全活用に取り組むことが求められます。

現代の建物に関するテーマは、省エネ性能向上と木材利用促進の2つに集約されます。

 

建設物省エネ法改正の背景(国土交通省)
建設物省エネ法改正の背景(国土交通省)

新築住宅の場合は、高断熱の省エネ建築物(ZEH水準)を建てるのは既存技術だけでも比較的簡単です。自家消費分電力を本体建物あるいは補助施設の屋根に設置した太陽光発電で賄うなら、ZEH水準を超えると思います。

 

問題は、新築住宅への対応だけでよいのか?です。新築住宅着工件数は2022年に87万戸でした。これに対して、2018年の統計で日本の既存住宅ストックは6240万戸あります。うち空き家が約850万戸です。

したがって、新築住宅だけではなく、既存住宅の断熱化改修などを積極的に実施していく必要があります。しかし、改正建築物省エネ法では新築住宅及び増改築する住宅が対象で、既存住宅は対象外です。 

 

既存住宅の改修が定着すると、カーボンニュートラルに近づくうえに、空き家対策にもなり、建て替えによるムダも減ります。

ただし、この取組にはまだまだ様々な技術革新が必要です。居住している住宅の改修であれば、それほど長期間を掛けることができません。住宅改修部品の開発や標準化、壁や窓の改修期間を短縮するためのモジュール化の研究などをしていく必要があります。

 

☞ 2018/09/20 2020年省エネ基準義務化で住宅市場が変わる

☞ 2019/09/23 断熱材を選ぶのは難しい