ロシアからの冬将軍をべニア板で防ぐ

寒くなってきました。最近は温暖化の影響もあって、働く現場での暑熱による健康被害がクローズアップされています。しかし、寒冷による影響も大きいので要注意です。

 

工場の設備担当として働いていたので、寒い日に屋外で作業する機会は結構ありました。山口県は比較的温暖なのですが、凍結事故なども稀に発生します。たくさん使っていた苛性ソーダ(48%)は10℃で凍結がはじまりますし、他にも凍結しやすい液体がありました。凍結したら温めればいいかと言うと、なかには加熱すると結晶水が抜けてさらに強固に凍結するような液体もあります。

 

凍結
凍結

凍結事故に限らず、寒いなか屋外での作業が長く続くことはあります。風が強いとか雪交じりに日であれば、文字通りしびれます。

 

暑熱環境では熱中症予防という意味から、WBGT値(暑さ指数)の活用して作業環境や作業時間、休憩、服装などの指針があって、比較的普及しています。

☞ 厚労省「職場のあんぜんサイト/暑さ指数」

 

一方で、寒冷環境での注意点はあまり普及していないように思います。

寒冷な作業環境といっても、冷凍庫・冷蔵庫内や低温の食品工場内の作業など、屋外工事や突発に発生する修理作業まで、ケースバイケースです。寒さに対する耐性は、暑さ以上に個人差が大きいそうです。極地域に住む先住民以上に寒さに強い日本人も一定数はいるそうです。

さらに防寒着の性能という要素もありますし、寒冷環境でのストレスが要因の健康影響は暑熱環境によるものより遅効性で目立たないといこともありそうです。

 

屋外での寒冷環境での作業が発生するようであれば、一定の基準を決めておいてもいいかと思います。WBGT値(暑さ指数)に相当するものとして、Twc(風冷温度)があります。

Taは気温でVは気象台の観測する風速です。屋外では風速によって体感温度が大きく影響されますが、湿度の影響は小さいので計算に入っていません。

Twc=13.12+0.6215×Ta-11.37×V^0.16+0.3965×Ta×V^0.16

 

Twcがマイナス10を下回る場合は、寒冷ストレスが大きくなるので特に注意が必要です。気温がマイナス5℃で風速10m/s以上といった環境です。一方で、Twcの式でわかるように、風を防ぐことができれば寒冷環境でもストレスは小さくなります。静穏気流であればマイナス15℃でようやくTwcがマイナス10になります。

 

ずいぶん昔のことですが、冬にドイツの工場で工事(小型の熱交換器の交換)をしているのを見たことがあります。数日で終わる小さな工事なのに、風よけ用に薄いべニア板で現場の風上を覆ってから作業を始めていました。「ロシアから冬将軍が攻めてくるから、しっかり守らないとね」ってドイツ人が言ってました。なるほどって、思いました。