工業用水インフラの便益は大きい。被害も大きい。

昨日から続くニュースです。「大規模漏水、トヨタは本社工場の稼働停止…工業用水の取水できず給水全面停止の恐れ続く」大変です。

 

日本の1日当たりの水使用量は、上水道が約4000万トン 、工業用水が約3000万トン、農業用水が 約1億5000万トンです。工業用水は使用量としては3つのなかでは最も少ないですが、経済的価値は最も大きいとされます。日本の産業、とりわけ化学・鉄鋼・製紙などの分野では大量の工業用水を必要とします。

 

愛知県の工業用水
愛知県の工業用水

さて、愛知県の取水場で発生したトラブルは、水門上流の川底に穴が開いて、水位が低下したのが原因だそうです。

この施設は、1日30万トン(計画値)の工業用水をトヨタなどの工場に供給し、1000haの農地に農業用水を提供するという重大インフラですから深刻です。

 

詳細は不明ですが、2013年度から今年度までの10年間で、300億円超の費用を掛けた耐震補強工事をおこなっているとのことです。過去に事故やトラブルで断水することがあったために実施されている工事の最終段階での大トラブルのようです。

早期復旧と再発防止の徹底が望まれます。

 

工業用水のトラブルを実体験したことがあります。工業用水はダムから取水するものや、河川の取水口から取水しても貯水池に一旦貯めるものが多いです。しかし、私の働いていた工場は、今回の愛知県の工業用水と同じく、河川下流の取水口からの直接送水でした。この取水口は潮止堰の上流に設置されています。

 

平成の大渇水があった年に、河川の水量が下がって潮止堰から海水が上流側に侵入するトラブルが発生しました。まぁ、原因はいろいろあったようですが、これに気づかないままに、工場に工業用水が送水されたのです。

工場で、複数の現場からちょっとおかしなことが・・と、あわてて連絡があったのは朝暗いうちだったと思います。原因が工業用水だとわかるまでには、少し時間がかかって始業時間を越えました。その頃になると、近隣の他の事業所から異常の連絡や問い合わせが入るようになりました。

 

工場の操業の大半を停止し、工業用水の取水を止めてから、工場内の水タンクを全部空にして入れ替える必要があります。複数のタンクや地下水槽から数千トンの水を抜いた後に、工業用水を受けなおして工場再開です。うっすらした記憶ですが、完全な復旧には12時間では足らなかったように思います。製品のお釈迦がどれくらい出たかも忘れちゃいました。

 

覚えているのは、タンクや貯水槽から水を抜く(底から抜くだけでなく、ポンプで汲み出したりもします)には意外に時間がかかるということです。夏の暑い日だったので、工場全体が水浸しになって、ちょっと楽しかったかも?不謹慎ですね。