バイオプラスチックのジレンマ・トリレンマ

レジ袋有料化でにわかに脚光を浴びているのが、バイオマスプラスチックと生分解性プラスチックです。

 

プラスチックとは成型加工できる高分子物質(樹脂)のことです。漆や木蝋のような天然樹脂もありますが、大半は石油からつくられる合成樹脂です。世界で1年間に約3億8千万トンの合成樹脂が生産されています。使用済みの合成樹脂は適切に処理されないといけませんが、残念ながら年間およそ1千万トンが海洋に到達して海洋プラスチック汚染を引き起こしています。

 

プラスチックスマート(環境省webサイトにリンク)
プラスチックスマート(環境省webサイトにリンク)

日本では、2020年7月に、法律によってレジ袋が有料化されました。

コロナ騒動があって、プラスチックという素材の保健衛生上の利点が再評価され、消費量が増えていることもあり、レジ袋有料化の政策は評判が悪いです。

まぁ、実利よりも意識を変えるという象徴的な目的が主の政策でもあるので、大目に見ましょう。

 

さて、多くのレジ袋が有料化されたなかで、これを逃れたものが二つあります。それがバイオマスプラスチック(バイオマス素材25%以上)と、生分解性プラスチック(海洋生分解性100%)です。

 

バイオマスプラスチックは、石油ではなく植物を原料とするプラスチックです。生分解性プラスチックは、自然界に存在する微生物などの働きで分解されて、最終的には二酸化炭素と水になるプラスチックです。

バイオマスプラスチックと生分解性プラスチックを合わせてバイオプラスチックといいます。【下の図を参照】

近年、バイオプラスチックの品質は飛躍的に向上しており、用途もひろがっています。それでも年間生産量はようやく200万トンを超えた程度で、プラスチック全体の0.5%くらいです。

 

バイオプラスチックは、脱炭素化に貢献はするのですが、生産段階でも食料やエネルギー用途の競合や土地利用の課題があって、万能の素材というわけでもありません。また、高性能なバイオプラスチックの生産には、相応のエネルギー投入(結局化石燃料を費消する)が必要になるというジレンマもあります。その分、価格も高めになります。

 

また、生分解性プラスチックは(変な言い方ですが)土や海の中に捨てられて、微生物に分解してもらうほうがいいのですが、石油系プラスチックと一緒に埋め立てられたり、焼却されたりしています。廃棄物処理の効率化にはなかなか結び付きません。

 

また、分解性が高すぎると、使用時に不都合ですからバランスも大事です。生分解ですから、微生物がまったくいない環境ではプラスチックはいつまでたっても分解は起こりません。微生物の少ない環境では分解に時間がかかります。瀬戸内海や日本列島近海の日本海など綺麗な海では分解速度はかなり遅くなります。

 

一方で、農家では生分解性マルチの利用が進んでいて、使用後のマルチは農場にすき込んで処理されています。生分解性プラスチック全般と農業(あるいは漁業)との関連を考えるのも興味深いですが、少々入り組んでいます。

 

というわけで、バイオプラスチックについては、質問されても明確な説明や意見表明が難しいのです。なんだか、どこまで行ってもスッキリしません。

今日は、変なブログですみませんでした。

 

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