事業承継に欠かせない従業員からの視点

中小企業の事業承継は日本中で大きなテーマですが、特に山口県では重要です。

 

山口県の中小企業の3/4(帝国データバンクの調査では75.3%)に後継者がいません。これは、全国平均の65.1%より10ポイント以上高く、沖縄県・鳥取県に次いで都道府県では3番目に高くなっています。沖縄県で後継者が少ないのは経営者が若いという理由が多いので、実質的には鳥取県と山口県が最も危機的な状況です。

 

従業員
従業員

山口県では、8月~9月の2か月間を「事業承継集中支援期間」として、商工会議所や商工会などで事業承継に関する相談窓口を特設して対応します。

 

私もいくつか支援に関わるのですが、事業承継支援の場合は、事業を引き渡す側の現経営者さんに対する支援が最も多くなります。

事業を引き継ぐ側の後継者さんのほうが、これからの時間が長いのですから、より支援をしなければならないのは当然です。しかし、多くの場合で後継者さんというのは現経営者のお子さんですから、どうしても先代に対して遠慮が先に立ちます。

 

尚、事業の親子承継と言えば、父から息子というパターンが頭に浮かびますが、私が関わった範囲ではこれ以外のパターンが意外なほど多いです。

女性のほうが健康長寿だということもありますが、母から子というパターンも多いですし、少子化もあって娘さんへの承継もかなりの割合です。製造業や建設業でも娘さんへの承継は目につきます。また、最近では1世代飛ばして、孫への承継もチラホラ見えます。

 

事業承継において、譲る人と譲られる人が最も重要なのは間違いありません。しかし、会社の事業承継で大きな影響を受ける関係者には、従業員がいます。

従業員にとって仕事は生活の糧であるだけでなく、夢や希望でもあります。雇用されて仕方なくやっているように見える(実際の熱意は気づかれ難い)仕事でも、あらゆる生活に関わり、人生そのものです。

 

陳腐な言い方です、「企業は人なり」であることもまた確かなことです。従業員が「頑張ってこの会社のために働きたい」と思うような会社の価値とは何かを考える必要があります。単に、うちの会社は、首切りはしていないとか、長年の功に応えているといった自慢話では満足できません。

 

事業の環境は刻々と変わっていきます。事業承継の機会を活用して、従業員とのコミュニケーションを改めてしっかりとることも大事です。

親から子へと、引き継ぐものは引継ぎ、変えるものは変えないといけません。そのときに、従業員の視点からその価値を検証することは大事なことです。