価格決定の基本的なプロセス

繁盛しているお店です。もう少し価格を上げてもいいんだろうか?という相談です。

 

4年以上、価格改定(値上げ)をしないで維持してるそうです。消費税が上がったときも、税込み価格を変えずにいました。仕入原価や経費が値上がりしていることもあって、そろそろ値上げをしたいけれど、お客さんの反応が心配で踏み切れないでいるということ。中小・小規模事業者では、割とよくある悩みです。

 

価格設定の基本的視点
価格設定の基本的視点

J-NET21から、図をお借りします。

 

価格の決め方には、生産者側に立った視点と消費者側に立った視点があります。

 

生産者側に立てば、価格は原価+利益です。

この商品やサービスを提供するには、いくらの原価がかかるのかを最初に計算します。仕入原価だけでなく、労務費、管理費、ときには破損や盗難、劣化などで発生する損料などもきちんと加えます。

次に、この仕事を続けていくには、いくらの利益が必要なのかを考えて決めます。

 

「価格>原価+利益」は、絶対に守らないといけません。これは当然のことで、これが崩れていると事業が継続しないわけです。

 

消費者側に立てば、いくらならこの商品やサービスの提供を受けてもらえるだろうか?と考えます。

 

想定しているお客様の持つ購買力によっても違いますし、競合している事業者があればその販売力もあります。最近は減ってきましたが、市場価格がある程度決まっている(慣習価格)ような商品やサービスもあります。

 

その場合でも、「価格<原価+利益」には決してなってはいけません。事業を続けられないわけですから。

ここで問題なのは、原価が経時的に上がってしまった。必要となる利益額が増えてきた。と言った場合です。事業を続けられないとはいえ、一度決めた価格を上げることは、なかなか困難です。

 

その場合は、商品やサービスをリニューアルする必要があります。例えば、原価を下げた安価版を出す。一方で、これまでとは一味加えた高価版も出すといったことです。いわゆる価格の松竹梅戦略です。

お客様は、価格の決定権が自分にあるほど不満を持ちません。メニューの中から、選ぶことが楽しいですし、満足度も上がります。

 

【例】

原価50円+利益目標50円で100円で販売していたが、原価が60円に上がった。原価60円+利益40円で利益が不足しますから、10円値上げしたいけど、言い出せない場合です。

例えば、原価40円+利益目標50円で90円の新商品(梅)、原価70円+利益目標70円で140円の新商品(松)を同時に発売するといったことは考えられます。