特許権取得でビジネスが守られると思うのは甘い

中小企業でも特許権を取得して、ご満悦な社長さんがたくさんいます。

 

特許権取得はステータスにはなりますが、これでビジネスが守られる、どんどん儲かる、なんて思っていては甘いです。中小企業にとっては、たいへんな金額を使って取得した特許権ですが、それほど強い武器ではありません。期待し過ぎないことです

 

知財とビル
知財とビル

特許・特許制度というものは、意外と長い歴史があります。

特許という仕組みは、1450年にベニスで最初に決められたようです。最初の特許権は、大聖堂を建築するための大理石を運ぶ運搬船に与えられました。

その後、1474年にベネチア共和国で、最初の成分特許法が刊行されました。初期の特許権はベネチアガラスの製法に関するものでした。

 

特許申請の数は減少傾向です。

昨年度(2019年4月~2020年3月)の特許申請は304,440件で前年度対比2.7%減でした。統計が発表されている今年度(2020年4月~7月)分は、88,852件で前年同期比6.8%減です。これはコロナウイルス感染症による経済活動の低迷が関係しているようです。

 

一般に、特許申請は景気が悪くなると減ります。経営上の優先順位が下がります。

グローバル化した現代社会では、特許権でビジネスが守られるということは、期待できなくなっています。各国の特許は、その国の中でしか有効ではありません。国際特許出願ということも制度としてはありますが、これをもって対象国で日本企業の権利が守られるはずだと考えるのは甘いです。

 

これに対して、特許取得と維持には、莫大なコストと手間がかかります。コスト対効果が見合う可能性を精査する必要があります。

 

特許侵害訴訟は日本では年間150件ほどしか起こされていません。訴えて、裁判で戦うには、少なくとも数百万円はかかります。そして、特許侵害訴訟で勝訴する確率は50%を超えません。さらに、仮に勝訴しても望んだだけの賠償が得られることもありません。しかも、膨大な時間がかかります。お金と時間に余裕がある企業が、メンツのためにおこなうケース以外は現実的は難しいでしょう。

 

ちなみに、アメリカなどの国で特許侵害訴訟を起こすなら1億円くらいのコストは覚悟しなければなりません。もちろん、アメリカで勝訴するば、日本と違って賠償額は膨大になります。チャレンジする価値はあるのですが、たいていの会社は、そんな余裕はありません。

 

中小企業の知的財産権の課題では、性善説に立っての甘い考えを捨てて、現実をシビアにみていくことが必要です。少なくとも、会社のために金を稼ぐ力がある人材には、あまり深入りさせないほうがいいと思っています。