エネルギーを発見したジュールは在宅ワーカー

現在、国際的に認められているエネルギーの単位は「ジュール(J)」です。

 

イギリスの物理学者、ジェームス・プレスコット・ジュールの名前が由来です。ジュールは、今からおよそ200年前、1818年に生まれています。当時はモーターが開発されたばかりの頃で、まだ性能が低いままでした。ジュールは、モーター性能を上げるための研究をおこなうなかで、電力を熱に変換する際の法則を発見しました。この熱を「ジュール熱」といい、変換する際の法則を「ジュールの法則」といいます。高校の理科では必修です。

 

ジュールの法則
ジュールの法則

単位のジュール(J)は、エネルギーの単位であり、同時に仕事量の単位です。

1Jのエネルギーは、およそ100gのモノを1m持ち上げるくらいに相当します。

 

さて、このジュールという人には、他の発明者や発見者との大きな違いがあります。

ジュールは本人が病弱だったことと、父親も病気がちだったために、子供の頃から学校にはほとんど通っていません。

 

ジュールの家は醸造業を営んでいて、かなり裕福でした。ジュールは、父親が仕事に携われなくなったことから、15歳のときには家業の醸造業の管理に関与していたようです。

学校には行かなかった(行けなかった)ジュールですが、お金には余裕があったので、優秀な家庭教師を採用して、自宅で勉強しました。そして、ジュールは、自宅に研究所をつくって、自ら実験をするようになったのです。 

 

ジュールの醸造所には、蒸気機関が導入されていました。ジュール少年は、これを当時最先端だったモーターに置き換えようと考えました。そこで、実験室で電流と放熱の関係を研究するようになります。その過程で、1/200度の精度が可能な温度計を発明したりします。

 

ジュールが、「ジュールの法則」を論文にして英国王立協会に送ったのは僅か22歳のときです。大学で学んでもいない若者の論文は、王立協会に無視されました。ジュールは、地元のマンチェスターにある出版社(科学でなく文学系)で、これを出版します。後に、このジュールの研究は、科学上の重大な功績と認められることになります。

 

その後もジュールは研究を続け、磁性体の磁気による変形(磁歪)を発見し、エネルギー保存則を発見し、ガス運動論からジュール=トムソン効果を見出すなど、数々の業績を上げ、多くの名誉も得ました。

 

これらの成果が、全てジュールの家にある研究室から得られたことは驚きです。ジュールは、在宅の研究者だったのです。

しかし、ジュールは研究に着手して30年余りで、ついに裕福だった家の資金を使い果たしてしまいます。破産です。その後は、王立協会の支援をうけながら研究を続けます。

幼いころには、学校にも通えないほど病弱だったにも関わらず、ジュールは70歳の天寿を全うしました。

世界一美しいゴシック建築:マンチェスター市庁舎 ジュール像
世界一美しいゴシック建築:マンチェスター市庁舎 ジュール像