抗ウイルス効果で光触媒市場が拡大するか

新型コロナ騒動で、光触媒製品に注目が集まっています。再ブレークするでしょうか?

 

本多ー藤島効果による光電極反応が発見されたのが、1972年です。簡単に言えば、酸化チタン電極と白金電極をつないで水につけます。この酸化チタン電極に光を当てると、あら不思議、電圧を掛けずに水が分解して、酸化チタン電極から酸素が、白金電極から水素が生成します。

 

酸化チタン光触媒による活性酸素の生成
酸化チタン光触媒による活性酸素の生成

酸化チタンに、光が当たると電子が励起され、この電子が他の分子に結合してこれを還元します。次に、電子が励起された跡の正孔が、分子から電子を奪って酸化します。

水分があれば、酸素が電子と、水分子が正孔と反応して、活性酸素ができます。これは、ウイルスや細菌から、いろいろな汚染物質を酸化して、二酸化炭素に分解します。

 

初期に実用化されて、有名なのがTOTOの便器へのコーティングです。1994年に発売されたこの便器は、抗菌と脱臭が売り物です。便器がいつまでも、黄ばむことがなく大人気になりました。

今では、発売されるあらゆる便器が、酸化チタンによる抗菌仕様になっています。

 

この便器開発の過程で、酸化チタンに超親水性という新しい効果が見つかりました。1997年のことです。酸化チタンをコーティングした表面は、とても水になじみやすくなるのです。ガラスに塗れば、水をはじいて透明なままで、汚れもつきません(分解する)から、用途が広がりました。

 

さて、光触媒による抗ウイルス性能です。光触媒で発生させた活性酸素が、ウイルスの外膜を

酸化分解することで、ウイルスの活性が抑制されることは、確認されています。

ウイルスは生物ではないので、殺すことはできないのですが、外膜の一部でも酸化分解して壊してしまうと、宿主である人間などの細胞と吸着できなくなる(つまり、ウイルスが不活化した)というわけです。

 

シャープが光触媒による抗菌・抗ウイルスを謳ったスプレーを販売したり、クリニックなどで外壁に光触媒を塗布するなど、コロナ騒動で光触媒に注目が集まっています。

 

但し、ここで注意が必要なのは、このウイルスを不活化させる効果は、光触媒の表面でしか起こらないということです。空気中に漂っているウイルスや、部屋の中にある(光触媒を塗っていない)机や棚に、扉のノブにくっついたウイルスには効果がないわけです。

 

つまり、万能ではないのですが、かなりのリスクを減らすことにはなります。光触媒は、一度塗布すれば、ランニング費用ゼロで効果がずっと続きます。検討してみてもよいでしょう。