新型コロナの抗体保有調査で分かるホントのこと

厚労省がおこなった新型コロナの抗体保有調査で、日本人で抗体を保有している人がとても少ないという結果になりました。

 

NHKオンラインによると、「厚生労働省が、6月1日から7日にかけて東京都と大阪府、宮城県の3都府県で、無作為抽出した20歳以上の男女合わせて7950人を対象に、新型コロナウイルスの抗体検査を実施しました。その結果、抗体を保有している人の割合は、東京で0.10%、大阪で0.17%、宮城で0.03%だった。」ということです。

 

厚生労働省が公表した結果というのは、次の図です。

抗体保有調査の結果について(2020.06.16)
抗体保有調査の結果について(2020.06.16)

ちょっと、分かり難い図ですね。

品質管理でいうところのクロスチェックをおこなっています。クロスチェックというのは、同じサンプルを複数の方法で検査・測定して、違いがあるか、あるとしたらどんな違いなのかを検証することです。

 

今回、厚労省は3つの検査方法を使って検証しています。

アボット(アメリカ)・ロッシュ(スイス)・モコバイオ(アメリカ)の3社の検査法です。このうち、モコバイオは参考値です。アメリカFDAが認可している、アボットとロッシュがクロスチェックの対象で、この2つの検査方法でともに陽性になったサンプルを陽性と判定したということです。(モコバイオはFDAに認可申請中)

 

例えば、大阪府の例をみてください。

サンプルの総数は2970です。アボット社の検査では、陽性が16で、陰性が2954でした。

ロッシュ社の検査では、陽性は10で、陰性は2960です。参考値のモコバイオ社の検査では、陽性が37と比較的多数(アボットは16・ロッシュは10と比較して)でています。

 

アボット社で陽性になった16のうち、ロッシュ社でも陽性だったのは5で、ロッシュ社では陰性だったのが11です。逆にロッシュ社で陽性になった10のうち、アボット社でも陽性だったのが5です。アボット社とロッシュ社で、ともに陽性だった5を陽性者としています。

尚、真の抗体保有者の判定ができないので、感度や特異度は出せません。

 

厚労省の抗体保有調査で分かったことは、日本では抗体保有者がとても少ないということです。これは、ほぼ間違いありません。

 

そして、もっとはっきり分かったのは、抗体検査の精度が低いということです。これは、間違いありません。

 

厚労省の調査で使われた検査法は、アボット社の化学発光免疫測定法、ロッシュ社の電気化学発光免疫測定法、モコバイオ社の蛍光免疫測定法です。いずれも専用機械を使用する本格的な検査法です。検査をおこなったのも、訓練を受けた臨床検査技師です。

 

このような正規の検査法を採用しても、抗体検査の精度はこの程度です。

マスコミで取りざたされているように、「簡易抗体検査キットで国民全員を検査する」などということをすれば、どんなことになるか容易に予想できます。

 

どんな検査をしてもウイルス感染の有無を確実に知ることはできません。抗体検査で陽性(抗体があるから)だから、自分はもう感染しないと断言できるわけでもありません。

 

PCR検査も同じです。未だに、PCR検査・検査と騒いでいる人が一部にいて、実際に毎日毎日検査をしている技師さんがいます。ムダ以外の何物でもありません。

 

患者を減らす。重症者を減らす。死者を減らす。ことが大事なのであって、検査の陽性者を増やすことに意味がありません。検査で陽性であることは感染者であることを意味しませんし、疾患があることも意味しません。ましてや、重症になり死に至ることも意味しません。

 

新型コロナウイルスの病原性がそれほど強くないとわかっているように思います。

症状が出た人は早期に診療して、早期に治療する。症状が進行した人は、適切に隔離して本格的な治療をおこなう。という、いつもの医療体制に早く戻さないと、本当に重症者や死者が増えていきます。