全員を検査しろというけれど~新型コロナ

マスコミでは、日本が新型コロナの検査(PCR検査)をする数を増やせないのがけしからんと騒いでいます(はしゃいでいますかな?)。

 

韓国では数日で1日に1万件を検査できるようになったとか、中国では簡易キットを開発して、これを使って検査をしているとか・・。それなのに、日本が1日に1千件とか3千件なんて検査しかできないのはけしからん。全ての希望者の検査をするべきだと、例によって頭から湯気を出しています。

 

PCR検査
PCR検査

私たちの環境分析の分野でも、そんな乱暴な検査をすることはありません。ましてや、医療の分野で何とも無茶苦茶なことを言っています。

韓国で1日に1万件の検査体制というのは韓国政府が言っていることのようですが、実際にはそんな体制にはなっていないと思います。マスコミは実際に確かめてから報道しているのでしょうか。

 

今回の新型コロナ(コビット19)のPCR検査のマニュアルが国立感染症研究所から公開されている。各検査機関は、このマニュアルに従って検査をおこなっています。一読してみてください。

☞ 病原体検出マニュアル 2019-nCoV Ver.2.6 令和 2 年 2 月 17 日

 

恐らく、このブログの読者の多くは最後まで読み進むことができなかったと思います。1検体の検査に6時間かかり、熟練した臨床検査技師でも1日20~30検体を検査するのが限界だというのは理解できるでしょう。

 

現時点で日本政府が言っている1日3千検体を検査するには、検査機器など環境が整っているうえで、200人以上の技師が専属で必要です。日本で臨床検査技師として働いている人は約5万人強ですが、当然ですが病院で働いている人が多くて約4万5千人、健診センターで働く人が約1千人です。民間を含めて検査機関で働く人は5千人ほどに過ぎません。この5千人から検査の技術水準を守って200人を割くことは容易でなかったと思います。

 

肺炎で亡くなる人が年間10万人以上というのはともかくとしても、今の時点で日本で風邪様の症状(咳、くしゃみ、鼻水、頭痛、発熱など)を出している人は百万人以上いると思います。

医療用ではなく薬局で買われる風邪薬(総合感冒薬)だけで日本の市場規模は年間750億円です。1日に2億円です。栄養ドリンクとか解熱剤など、風邪様症状の改善に買われるものを含めると、この2倍以上になるでしょう。

この圧倒的な人数を前にして、心配な人には全員に検査を受けられるようにしろ!と政府に要求するのは無茶です。