新型感染症、”国境を閉ざす”は間違い

連日、新型感染症の問題で大騒ぎです。マスコミ報道は言葉が悪いですがはしゃぎすぎです。

 

政府の対応の一つ一つをまさに口角泡を飛ばす勢いで批判しています。もちろん、どなたも実現可能な対案など持っておらず、ただ批判するだけです。なかには蛮勇を振るって、論理的にありえない対策を披露するコメンテーターやタレント専門家もいますが、こういう人はデマを垂れ流すので大いに迷惑です。

 

国境の壁(アメリカとメキシコ)
国境の壁(アメリカとメキシコ)

水際対策の失敗だと政府を批判して、早期に国境を閉ざして中国からの人の移動を禁止すべきだったという意見を聞きます。

感染症は人の移動によって起こるので、移動を止めることと、人を集めないことが感染拡大を防ぐ要諦だと言います。

 

中世以前の時代ならともかく、国境を閉ざすことが感染症の流入を防ぐ手立てにならないことは明らかです。

どんな感染症にも潜伏期間があります。国境を越えての人の移動が増えている現代においては、閉ざす判断をした時点では既に流入は起こっています。島国・日本でも入境・出境する人は毎日20~30万人もいます。

 

また、国境を出入ともに閉ざすことは、閉ざされた国での感染拡大の抑止や治療に障害となり、悲惨な状況を作り出します。少なくとも、感染が拡大している国から出る者への監視を多少は強めたとしても完全に閉ざすことは間違いです。また、国外あるいは域外から感染が拡大した国に救援する役割の者が入ることを妨げてはいけません。この場合、入るはいいが、出るはダメ(救援に入った人が出られなくなる)は、入るもダメと言っているのと同じです。

 

グローバル化の進んだ現代では、経済的な意味でも関係国との国境を閉ざすことはできません。新型インフルエンザはメキシコで発生してアメリカに広がりました。オバマ大統領は国家非常事態宣言を出しましたが、メキシコとの国境を閉じることをしませんでした。

トランプ大統領は不法移民対策のためにアメリカとメキシコ国境に壁をつくりましたが、仮に同じような感染症が起こっても国境を閉じることはないでしょう。アメリカにとってメキシコとの経済的な結びつきは大きいのです。

 

つまりは、日本が北朝鮮との国境を閉じることはできても、中国や韓国との国境を閉じることは考えられません。南太平洋の国が日本との国境を閉じると宣言するのも、経済的な結びつきが希薄だからです。

国(国民)は、経済活動をおこなわなければ生命を維持できません。健康のためには生命は要らない、というわけにはいかないのです。