捨てる紙あれば拾う紙あり

このところ紙関係の仕事が続いているので、紙のリサイクルについて書きます。

 

まぁ、皆さん薄々は気づいておられるでしょうが、日本の紙のリサイクルはほぼ限界に近いところにあります。2018年の古紙利用率は64.3%でしたが、政府が掲げる古紙利用率の目標は65%です。なんとか知恵を絞って残り0.7%を伸ばしていこうとしています。

 

古紙利用率(古紙再生促進センター)
古紙利用率(古紙再生促進センター)

古紙利用率が64.3%なら、まだまだ低いじゃないか! 100%まで35.7%もあると思う人がいるかも知れません。何故、目標が65%なのでしょうか?

 

2018年の日本の紙・板紙の生産量は2,605万トンでした。このうち202万トンが輸出され、107万トンの紙・板紙が輸入されます。日本国内で消費された紙・板紙は2,533万トンでした。消費された2,533万トンのうち、2,067万トンが回収されています。回収率は81.6%にもなります。

 

回収率が81.6%では低いと思うかも知れませんが、回収できない紙があるのです。例えば、トイレットペーパーやティシュぺーパーなど衛生用紙が思いつきます。高齢化で紙おむつの消費も増えています。紙コップや紙ストローなど紙製容器も回収できません。

レシートなどの感熱紙や複写用のカーボン紙、緩衝材などに使われる紙などは再生できません。営業秘密が書かれている書類などは、敢えて回収に出さないケースもあるでしょう。

また、再生紙といっても無限に再生はできません。再生するたびに紙の繊維は短くなっていくので、だいたい4~5回転が限界とされています。こう考えてみれば、81.6%はかなりの数字だとわかります。

 

さらに回収された古紙2,067万トンのうち、2018年では378万トンが輸出されました。この7割は中国向けになっています。残った古紙から生産された再生紙1,696万トンが国内で消費されたわけです。紙・板紙生産量に対して再生紙の消費量が64.3%となりました。

 

さて、残り古紙利用率65%まで残り0.7%を上げるには、紙は白いものだという意識を変えるしかありません。新聞と段ボールという古紙利用の2大エースの消費が減ってきていますから、上質紙の古紙利用率を上げるというのが残った手立てになります。

日本は世界一の脱墨技術を持ってはいますが、それでも完ぺきではありません。日本人が「上等な紙は白い」という常識を少しだけでも捨てるということなんですが、なかなか難しいかも知れません。

 

ところで、私のいた会社はコピー機やプリンターで使われるトナーの材料になる酸化鉄を製造していますが、「きれいに印刷できて消えたりかすれたりしないが、紙を再生するときに簡単に剥がれるトナー」というテーマがありました。どう考えても難しいですよね?

 

トナーにしてもインクや墨でも鉛筆の黒鉛でも、印刷や筆記に使われるものは何でも、紙をリサイクルする際には邪魔者扱いされて、最後は捨てられてしまうのです。

トナーであれば世界で年間20~30万トンが生産されるのですが、大半が紙から剥がされて廃棄されるというわけです。但し、酸化鉄トナーは原料が鉄と酸素なので、廃棄するといっても地球に優しい材料です。