日本が石炭火力を続ける理由

日本には利用できる化石資源が無いので、輸入しなければなりません。

 

化石資源の輸入にはいろいろな制約があり、地政学的なリスクがあります。そこで、日本は石油・石炭・天然ガスの3つの化石資源のバランスをとって輸入しています。2018年の場合、一次エネルギーに占める石油の割合は37.6%、LNGは22.8%、石炭は25.1%です。

 

省エネセミナー資料(エネルギー自給率)
省エネセミナー資料(エネルギー自給率)

一次エネルギーに占める石油の割合が高いのは、電力以外のエネルギーとして石油の使用が大きいのが原因です。自動車はもちろん、ボイラーでも石炭を燃料にすることはあまりありません。電力に限れば、発電電力量ベースで石油の割合は7.3%しかありません。LNGが38.4%、石炭が31.2%となります。

 

石油はその8割を中東からの輸入に頼っています。現在の中東情勢を考えても石油に頼り切るわけにはいきません。さらに、石油の値段は乱高下します。

 

下のグラフを見せると驚く人も多いのですが、原油価格は2倍にも1/2にもなります。普通の人が実感としてピンとこないのは、ガソリン価格がそんなに変わらないからです。これはガソリン価格(1リットル)には66.5円の税金や輸送料などが含まれていて、原油分は価格の2割くらいにすぎないからです。ガソリン価格が5円動くのは、原油価格が20%動いたときです。

 

省エネセミナー資料(原油価格変動)
省エネセミナー資料(原油価格変動)

 

LNGは比較的多くの国から輸入が出来ています。石炭は75%がオーストラリアからの輸入です。「化石賞」はオーストラリアも受賞しました。尚、日本の石炭輸入量は、この10年間では毎年ほぼ一定です。

 

原子力発電がほぼ停止している状況では、火力発電の燃料としてはLNGと石炭をバランスよく使用するしか日本の選択肢はありません。この背景のなかで、日本のLNG火力発電や石炭火力発電の効率が世界でずば抜けた性能になったのです。

 

そして、日本で石炭火力が必須である重要な理由がもう一つあります。それが、バイオマスの使用です。日本では多くの石炭火力発電所が混焼型で建設あるいは改造されています。

バイオマス発電といっても、木材や竹材だけを燃やす(専焼)は炉体を傷めることから実用化できていません。そこで、石炭に混ぜて燃やすことにするわけです。この結果、日本の発電量のうちバイオマス発電の割合は2010年の1.3%から2018年には2.3%となりました。