水没の都になったベニス、水はどこから?

ベニスの水位は過去50年で最高。町中が水没して、伊政府は非常事態宣言を出しました。

 

英語の発音に近いのがベニス、イタリア語ならベネッツィア、文字表記ではベネチアが多いようですが、我々世代は「ベニスの商人」の印象が強くてベニスとしましょう。さて、地球温暖化の影響を受けているのか、ベニスが50年ぶりの高潮に見舞われています。ただ、観光客はこれを逆に珍しがって、水の中をザブザブ市内見物に回っているとか・・?!

 

水没の都ベニス(AFP)
水没の都ベニス(AFPのWebニュースより)

最初に抑えておかなければならないのは、地球上に存在する水の総量は一定で変わらないということです。水は地球の外からやってくるわけではないので、現にある水がどこにどんな形で在るかということです。

水の総量は約14億㎦とされています。

 

地球温暖化によって海面が上昇するメカニズムは、温度が高くなって水が膨張して体積を増すことが1番目です。

2番目は氷河(大きければ氷床・小さいと氷帽)や南極大陸やグリーンランドを覆う陸氷が解けて海に流れ込むことです。

 

しかし、実はこの2つだけでは海面上昇を全て説明できません。3番目に思いつく、北極海などで海氷が解けている現象は、地球の大気循環を変えることで異常気象をもたらしますが、海面上昇には直接つながりません。

 

海面上昇には温室効果ガスの排出以外の人間の営みが影響しているのです。その最大の要因が地下水の汲み上げです。現代の日本は地下水利用が減ってしまいましたが、高度成長期には地盤が沈下するほどの地下水を使っていました。今も世界中では人口の爆発的増加や経済発展によって地下水を汲み上げては、最終的に海に流しています。

さらに、河川や湖沼にある淡水も重要な資源であり大量に取水しています。つまり、陸上にあった水が海へと居場所を変えているわけです。

 

海面上昇に関しては、地球温暖化の影響とほぼ同じくらいの大きさで地下水や河川水の大量取水=大量消費が問題です。人口増加と生活水準の向上は淡水使用量の増加を必ず伴いますから、この解決策は限られます。

 

人工降雨という解決策もあるのですが、直接的には海水淡水化です。日本は膜分離という海水淡水化技術でトップランナーです。日本企業にとって、市場は無限に期待されます。

そして、その先の未来は海からの有用金属資源の回収です。近い将来、淡水を得ると同時に、残った排水中の濃縮された塩が、新たな鉱山として利用されるようになるでしょう。