台風だから出社しないでいいか?

台風が来たら、安全のためにムリに出社することはないということになっています。

 

最近では、台風が来たときに「会社に来るな」と命令を出さない会社とか上司は、けしからんという話です。社員の判断の任せることがブラックなんだそうです。そこで、多くの社員が自分の仕事の内容を自分で忖度して、台風の日に出社しても仕事にならないからと無断で休むのが常識になっています。

 

平成11年台風18号
平成11年台風18号

会社もいろいろなので、休める会社は休めばいいのですが、一事が万事でそういう風潮が広がっていくのもちょっと困ったものです。

 

以下はとても特殊な事例なので、こうじゃなけりゃならないと言っているわけではないので悪しからずです。

 

平成11年の台風18号は宇部市を直撃したスーパー台風です。宇部市・小野田市では多くのエリアが水没しました。写真は、山口宇部空港の駐車場から空港ビルを撮ったものですが、空港は完全に水につかりました。私が勤めていた工場は小野田の埋め立て地にあるのですが、やはり全域で水没しました。

 

台風の来襲は午前8時半過ぎの予想でした。私は設備の担当でしたから、台風の中心が来る前の6時半頃に工場につきました。物凄い風で、7時頃からは窓ガラスが割れたり、シャッターが曲がったりという被害が出始めました。電話で修理?依頼が来ても、何もできませんから、とにかく建物に風が入らないように何かで塞ぐように指示するくらいです。

 

ところが、この暴風が8時前には、台風の目に入ったようで、ピタツと止みます。青空も見えてきたので、設備保全室のシャッターを開けて修理対応の準備をしていました。すると、構内道路のコンクリート舗装の割れ目から水が勢いよく吹き出してきました。

見たことがない光景に驚いて、堤防まで走っていってタラップを昇ると、海面がグングン上昇していくのが見えます。工場の高い堤防でも、海水が超えてくることは間違いありません。

 

慌てて、保全室の電話で連絡を取ろうとしましたが、もう、そのときには堤防を越えた海水が工場構内に流れ込みました。海水は、あっという間に膝高を超えてしまいます。

こうなれば、工場の生産が止まるのは仕方ないですが、重要なのは安全です。工場には、いろいろと危ないモノや装置があります。止めないと危ない装置は止めて、止まると危ない装置は何としても止めないことが必要です。浸水に加えて、再び風雨が強くなって、断続的に停電になっているなかでの作業です。

 

私も一番やばそうな機械を止める作業をしながら、何とか指示を出そうとするのですが、交換機がある事務棟も浸水したので構内電話も使えませんから大変です。緊急対応には人手が必要ですし、連絡や記録にも人が要ります。

ところが、時間が悪かったのです。日勤者の勤務開始が8時半だったので、通勤途中だった多くの従業員(設備や製造のスタッフ)が工場についていません。この時点で、工場の前の道路は浸水して、水に浮かんだクルマが何台か下流側に流されて溜まっていました。来ないものは当てにならないので、構内にいる者に誰彼なく指示していくような状況です。

 

ヘトヘトで走り回っていたところ、女性職員がテキパキと事務所の片づけをしていました。風雨と冠水のなかを自宅から歩いてきたのだそうです。やっぱり、これはありがたいです。

当時は、まだまだ風水害への事前の対応が不十分だったと思います。現在では、こういったことは無いのかも知れませんが、ちょっと考えるところはあります。