BATNA~合意できなかったらどうするか~

BATNAは、最も望ましい代替案(Best Alternative to Negotiated Agreement)のこと。

 

交渉は相手があることですから、双方があらゆる部分で対等にwin-winとなる合意を得ることはできません。交渉する以上、自社にも相手にも何かの目的があります。その目的を達成するために、どこかの部分では相手に譲り、それ以外の部分では譲ってもらって、合意を得ます。それでも合意できない場合はBATNAの出番です。

 

握手
握手

交渉のステップは次のようになります。

 

交渉を担当する者は、最初に自社の状況を正確に把握します。社長や上司の話を鵜呑みにしないで関連部署の状況も聞き取ります。

上司から仕事を取ってこいと命令されて、苦心惨憺で注文を取ったら、製造部門からその仕事はできないと言われてしまうなんて、悲惨なことにならないようにです。

次に相手の状況、事業環境や法律規制など交渉に影響を与える可能性がある状況を、予め把握することが大事です。

 

次に、交渉の目的をはっきりさせましょう。自社が何を勝ち取りたいのかを明確にします。当然ですが、上司にしっかり確認を取っておきます。そして、その目的に即して交渉の目標(ターゲット)を決めます。

 

分かりやすい例で、自社が売り手であって価格交渉の目的が、最も高性能な製品(仮に機能100%)を最も高額な金額(仮に1億円)で販売することだとします。ところが、相手が性能を犠牲にして50%の性能の製品を4000万円で購入することを望んでいるとしたら、交渉者であるあなたは目標を70%の性能の製品を7500万円で売ることと決めます。

 

ここからは交渉です。相手もできるだけ高性能の製品が欲しくて、条件次第では6500万円までなら支払ってもいいと考えているとします。自社の方も、相手が製造方法の見直しを認めてくれるなら受注金額を下げてもいいが、少なくとも5500万円は確保したいとします。この場合には、条件を詰めて、5500~6500万円の範囲で契約が成立する可能性が高いです。

 

この交渉の段階では、単に機能と価格だけのせめぎ合いではなく、お互いにwin-winになるようなアイディアを出し合うことが大事です。相手は、高性能な製品を望んでいるわけですが、機能のなかでも優先順位があるはずです。自社の側では、相手にとって大事な機能があればそこにオプションを付加してもいいでしょう。交渉の過程で生まれる創造性がビジネスの発展や継続につながります。

 

それでも交渉が合意に至らなかった場合はBATNAです。

交渉というのは決裂することもあります。むしろ、交渉とはお互いに決裂してもいいという状況でしなければ質が落ちます。何がなんでも合意するという交渉は事後に禍根を残します。

交渉が決裂してもいいと考えるには、自社がBATNA(代替案)を準備できていることが重要です。

 

上の例で言えば、相手がどうしても5000万円以上では契約しないと突っぱねた場合に、この製品を6000万円で購入する別の会社を見つけていたなら、これが一つのBATNAです。

もし、相手が来期にその製品の2台目を購入する計画だと知っているなら、今同じスペックで2台契約してもらえるなら2台で1億円(1台5000万円)にするというのもBATNAです。

また、この契約が成立しなければ、同じくらいの利益が見込める他の製品を別の会社向けに製造することを工場と打合せ済みなら、これもBATNAです。

 

良質なBATNAを持って交渉に臨むことが大事なんです。