ノーベル化学賞に旭化成の吉野彰氏

めでたいことです。リチウムイオン電池に関わったこと多くの人も喜んでいます。

 

90年代の後半には、仕事でソニーの研究所や技術センターにときどき行っていました。

AVテープ(アダルトビデオではなく、オーディオ・ビデオテープです)や、コンピューター・データストレージ用テープの仕事です。ソニーが世界初の商用リチウムイオン電池を発売したのがちょうど1990年の暮れでしたから、何かと話題になっていました。

 

世界初のリチウムイオン電池
世界初のリチウムイオン電池

リチウムイオン電池は、正極材にリチウム酸コバルト、負極に炭素、セパレーターと電解質という4つの材料で出来上がります。

 

正極も負極も粉末を使用しており、分散・混合・スラリー均質化の工程を経て集電箔に塗布されます。この工程の流れはAVテープをつくる過程と似通っています。

日本が世界に冠たるリチウムイオン電池大国に素早くなれたのは、AVテープつくりの技術の蓄積が貢献したのだと思います。

 

正極材や負極材に使われる粉末が素早く量産化できたのも、AVテープ用磁性分の生産技術が役にたちました。

私が勤めていた会社は磁性材料であるフェライトを製造しています。フェライトというのは酸化鉄に異種金属を組み合わせた合金です。このフェライトがAVテープの材料になりました。

基になる酸化鉄を湿式合成で製造するのですが、鉄の代わりにコバルトを入れて反応すれば高純度の酸化コバルトが作れます。理科で勉強した周期律表を思い出してください。鉄Feの隣にコバルトCoがあります。両者はよく似た元素なんです。

 

更にフェライトといえば、マグネシウムフェライトやバリウムフェライトがメジャーですが、ナトリウムフェライトなんてのもあります。周期律表でナトリウムNaのひとつ上がリチウムLiです。マグネシウムMgはリチウムLiの斜め下です。それぞれ近い親戚元素です。

ということで、私の勤めていた会社は、それらの技術を活かして、リチウム酸コバルトの製造に着手しました。現在もこの分野での有力なプレーヤーの一つです。

 

この当時、私は製造から離れて設備担当になっていました。リチウム酸コバルトという材料には直接は触っていなくて、量産第一工場の建設のほうに携わりました。かれこれ20年近く前のことです。


※注)このブログの記述は科学的には不正確です。正確に書くと冗長になって想定している読者には、ややこしいので丸めています。悪しからずご容赦ください。