鉄塔倒壊、技術基準を見直す必要

千葉県に大停電をもたらす原因の一つが、送電鉄塔の倒壊でした。

 

鉄塔の倒壊というのは、これまでも時々起こっています。近い方から、2012年11月に北海道電力管内の登別でおこった倒壊事故、2005年4月の北陸電力管内の能登、2000年10月の東京電力管内の潮来などです。登別は着雪、能登は地滑り、潮来は今回と同じく台風による強風が原因とされています。

 

千葉県での鉄塔倒壊(2019年台風15号)
千葉県での鉄塔倒壊(2019年台風15号)

鉄塔倒壊では、1998年2月に四国電力管内の坂出での事件も衝撃的でした。これは事故ではなく、何者かが送電鉄塔の台座部分のボルトの大半(80本のうち76本)を抜き取ったために起きました。この事件は迷宮入りしています。

 

さて、自然災害による鉄塔倒壊が起こるのですが鉄塔の技術基準による設計条件は次のようになっています。

高温季条件: 気温5℃,風速:40m/s(地上高15mでの10分間の平均風速)

低温季条件 :気温マイナス30℃,風速:28.28m/s,被氷厚:6㎜,密度:0.9g/㎤

 

2000年の潮来の倒壊は今回と同じように東京湾を通過した台風による強風が原因です。銚子で52.2m/sの風速を記録しました。事故後の解析結果でも、鉄塔の高さ15mでの最大風速は50m/sを超えていました。しかし、10分間の平均風速は約33m/s(40m/s未満)でした。

 

鉄塔が平均風速40m/s未満で倒壊したのは、変動風速が大きな要因です。

鉄塔はいずれも技術基準を満足して立っていたのですが、台風での風の変動の影響に耐えられなかったのです。簡単に言えば、台風では平均33m/sといっても50m/sを超えるときもあり数m/sに風が弱まるような、大きな変動があります。平均風速ではなく、この風の変動に鉄塔が耐えられなかったのです。

 

また、鉄塔は電線でつながっているので連鎖倒壊を起こします。1本の鉄塔が倒壊しそうになると、隣の鉄塔も電線で引っ張られます。同じように風を受けている鉄塔どうしですから支え合うのではなく、一緒に倒れることがあります。

 

今回の鉄塔倒壊の原因は未だわかりませんが、平均風速40m/sという基準は見直す必要がありそうです。異常気象が日常化するなか、その他の着雪・着氷に関する基準を含めて、基準を厳しくせざるを得ないように思います。