LPWAの普及が待たれる建設業界

ものづくり補助金では「IT建機」の導入を申請する事業者さんが増えています。

 

建設機械(ショベルカーなど)の位置情報をGPS(Global Positioning System)で管理しながら、各種のセンサーからの情報を通信して建設作業を半自動でおこないます。掘削の深さや角度などが一定に保たれて、安全で正確な作業が、熟練したオペレーターでなくても可能になります。人手不足の建設業界では待望の技術です。

 

IT建機
IT建機

最初に確認しておきます。ものづくり補助金では車両は補助対象外になっています。

ショベルカーなどの建設機械やトラクターなどの農業機械も車両じゃないか?と思われるかも知れません。しかし、通常で車道を走ることがない、これらのものは機械装置に分類されて車両には当たりません。

 

車道を走るクレーン車などの場合は、車両のベースになる部分は対象外ですが、これに取り付ける機械部分(例えば、クレーンなど)は補助金の対象です。

 

IT建機が稼働できるには、情報通信が重要な鍵を握ります。車体に取り付けられたセンサーからの情報とモニターで撮影している画像の情報の両者を解析することで、建機はその能力を発揮します。

 

携帯電話による通信ができればまだしもですが、土木建設の現場では安定した通信環境が確保できない場合が多いです。近くに基地局が無ければ通信できません。楽天の携帯電話への参入が基地局の整備ができずに遅れているという報道もありました。

こういう場合には衛星通信を利用することが可能ですが、コストがかかります。この方法は、言うなれば、自前の基地局を建設現場に持っていくようなものです。

 

そこで重要なのが、LPWA(Low Power  Wide Area)通信技術の普及です。日本では、欧州諸国と比較してLPWAの普及が遅れがちです。5Gなど高速通信に注目が行きがちですが、産業用にはLPWAの価値がより高くなります。今、最も拡大が期待される産業領域の一つです。

 

平成30年度版「情報通信白書」から該当部分を転載しておきます。

  

LPWA

IoT時代においては、多様なアプリケーションの通信ニーズに対応することが求められるが、現在開発・提供等が進んでいるのがLPWA(Low Power Wide Area)と呼ばれる技術である。LPWAの通信速度は数kbpsから数百kbps程度と携帯電話システムと比較して低速なものの、一般的な電池で数年以上運用可能な省電力性や、数kmから数十kmもの通信が可能な広域性を有している。

 

これまでLPWAネットワーク市場は、欧州企業であるSIGFOXによるSigfoxとCiscoをはじめとした米国企業が推進するLoRaWANとが牽引してきた。一方、3GPPが進めるセルラー系LPWAは、SigfoxやLoRaWANに比べると高ビットレートのため、LPWAの中でも比較的ハイスペックな用途を中心とした市場開拓が進められている。LPWAは低速、長距離、低コストを特徴とする無線技術のため、IoT化を進める中国やその他アジア地域でも今後拡大が予想される。

 

LPWAのモジュール出荷台数及び接続数はいずれも高い成長率での増加が続いており、2020年には全方式の出荷台数は合計4億台を超えることが予測されている(図表1-1-3-15)。