空調設定温度1℃緩和で10%の省エネは本当か?

省エネ運用改善の常識として、「1℃の緩和で10%省エネになる」があります。

 

冷房の場合、設定温度を25℃から26℃に上げると10%、27℃ならさらに10%なので合わせて19%、推奨の28℃まで上げると27%の省エネになるという計算です。暖房なら、逆に設定温度を下げると省エネになります。省エネ効果の実感としてどうでしょうか?

 

空調の推奨設定温度
空調の推奨設定温度

冷房の設定を25℃から28℃まで上げても27%しか省エネにならない?と考えると、体感的にはもっとエネルギーが減るような気がしませんか?

また、建物の構造や室内での仕事量なども異なるので、1℃が10%というざっくりした指標は信用ならないような気もしませんか?

 

省エネの診断や相談で、1℃の緩和で10%というのは根拠があるのですか?と訊かれることがあります。

 

実は、根拠はあまりありません。実際に計測した事例でも数値はばらつきます。いろいろな文献でデータが提供されていますが、1℃緩和の省エネ率は2%台から20%台まで異なります。何となくですが、冷房の1℃緩和の省エネ率は10%前後に集中しますが、暖房の場合はかなりばらついています。

 

空調設定を緩和することで省エネになるのは当然で合理的です。但し、その省エネ効果はケースバイケースで変わります。一律に何パーセントということは、科学的には正しいことではないのですが、何か目安があるほうが取り組みに力が出ます。その目安が、1℃の緩和で10%の省エネ効果というわけです。

 

同じような表現に、「投資をしなくても、全社で省エネに取り組むだけで15%の省エネが達成できる」というのがあります。これは、東日本震災の後に電力供給が減って、節電を働きかけられたときに、直接被災地域以外の電力使用量が約15%減ったことが根拠です。

まぁ、未曽有の震災と平時の活動を一緒にするのもおかしいですし、科学的に正しいわけではないのですが、やればできる!という目標にはなりそうです。