JRA禁止薬物混入事件は再発防止になっていない

JRA(日本中央競馬会)が認めていた飼料に禁止薬物が混入していたという事件です。

 

6月15・16日に東京・阪神・函館の3競馬場で合わせて156頭が競争除外になり大問題になった事件です。中央競馬は公営ギャンブルの柱で、大きなお金が動きますから大変です。馬用のカルシウム補給剤である「グリーンカル」という製品に、興奮剤として禁止薬物に指定されているテオブロミンが混入していたということでした。

 

函館競馬場(2019.6.16)
函館競馬場(2019.6.16)

写真は函館競馬場の6月16日のメインレースですが、13頭立てのうち6頭が競争除外では、ファンも馬主も厩舎も黙っていられないでしょう。

 

その禁止薬物混入事件の顛末の調査結果と再発防止対策が公表されました。

 

2019年7月5日「飼料添加物への禁止薬物混入に係る調査結果と改善策について」

JRAのWebサイトにリンクです。

 

いや~、調査結果の内容にはビックリします。こりゃ、ダメです。

「グリーンカル」というのは、要するに馬用のサプリメントで、カルシウムを中心にミネラルやビタミンを配合したものです。この製品ロットが長い間ずっと同じだったというのです。

 

調査によれば、「産地や入手時期が異なっても原材料名が同じであれば同一のもの」であり、同一配合率、同一製造工程により製造された製品であれば、非連続製造であっても全て同一のロットとみなしていた。これを読んで腰が抜けました。全く信じられないです。

 

さらに、禁止薬物のデオプロミンが混入したのは、「グリーンカル」の製造工程と同じ建物内の近接する場所でテオブロミンを含むカカオ豆副産物を製造しており、その粉塵が混入したと特定された。これまた、びっくりです。農産加工でドリフトは最も気をつけないといけない事象ですし、製造業全般でも考えられない低レベルです。3世代くらい前のものづくりです。

 

そして、改善策として提示されているのが、JRAと競理研で薬物検査申請情報を常時共有し、「長期間同一ロット番号での申請であれば確認する。禁止薬物を含む植物等を飼料添加物等の製造ラインに近接させないなど、製品の品質管理を徹底する。などですが、真の原因を排除していないので、再発防止になっていません。同種の事案が、いつか、また起こる危険性は高いでしょう。

 

品質管理や品質保証マネジメントの基礎ができていないとしか言いようがないわけで、国民のお金を取り扱う公営ギャンブルの運営としては極めて不適切なように思います。

 

そもそもJRAは日本政府が全額出資している団体です。政府のレベルでもこれでは、日本の品質管理レベルが総じて低いと思われる心配があります。国内の多くの真面目な事業者にとって大迷惑です。何とかしてもらいたいものです。