できることを全てやってはいけない

待機児童ゼロを目指してできることを全てやった結果が、膨大な税金を投入してつくった、定員割れでガラガラの安っぽい施設ということになりそうです。

 

そもそものスタートで、待機児童問題の本質の理解が曖昧なままでした。国会での議論はマスコミや有識者を巻き込んで、非科学的で感情的なままで進みました。現在は企業主導型保育園の問題だけがクローズアップされていますが、この後の展開は心配です。

 

保育園・幼稚園
保育園・幼稚園(本文とは関係ありません)

会計検査院の報告書は衝撃的です。

待機児童ゼロの対策として、つくれるところ全てに保育園をつくる政策がとられています。そのなかで、企業主導型保育園について調査した結果です。

 

平成28年と29年に、全国で322施設が703億円の補助金(税金)を投入して設置されました。そのなかから、173施設を調査した結果、42%に相当する72施設は定員の半分以下しか充足していませんでした。定員の10%未満という保育園も8施設ありました。

開園から僅かの期間で休園・閉園している施設もあります。多額の補助金を使ってつくられた施設が、どうみてもその費用に見合わないものだという指摘もされています。

補助金8000万円を投入してつくった保育園が預かっているのが4人だけ、1億4千万円を投入して建てた建物が違法建築だったので開園できていない、など惨憺たるものです。

 

企業主導型保育園以外でも、似たようなことが起こっているのではないでしょうか?

 

正確な数字の把握は難しいのですが、現時点での待機児童数は全国で約2万人。保育施設の総定員は約290万人で、利用人数は約267万人です。日本全体では23万人分の余裕があるのですが、需給バランスがマッチしません。

 

2万人の待機児童をゼロにするために、1年に10万人分の保育施設がつくるのが正しいのでしょうか?昨年生まれた子供は92万人を下回りました。

現在の未就学児の総数は約590万人ですが、まだ減っていきます。3歳以上の子供は、約300万人で幼稚園に約120万人、保育園に約155万人が通っています。恐らく、この年齢層は完全な希望通りとは言えなくても一定の就学前教育を受けられています。

 

3歳未満の子供でみると、0歳児の15%強(約15万人)、1~2歳児の約半数が保育を利用しているわけです。一方で。育児休暇取得の強制などをすれば、この年齢層の利用者が減ることも予想されます。

 

孫子が「拙速は巧遅に優る」といったというのは有名なウソです。孫子が言ったのは「拙速で(たまたま)成功した例はあるが、(ぐずぐずと決めかねていて)巧遅で成功した例はない」ということです。何にせよ、時節をつかむ必要があるよ、と言っているのです。

 

軍事においても経営においても、兵站は重要です。「今できることを全てやる」のではなく、「ずっとやり続けられることをやる」のであって、できることを全てやってはいけません。