M&Aで時間を買う!

昨日の続きで、M&Aです。日本でM&Aの件数は2011年を底にして増加しています。

 

M&Aの目的を買い手企業から考えれば、売り手企業の財務的資産が目当てではありません。自社あるいは自社グループの成長発展のための時間を買うのです。今、進みたい方向性があったなら、その方向に技術・人材・設備を自力で構築する時間に替えて、M&Aで調達するのですから、当に時間をお金で買うわけです。

 

M&A件数の推移
M&A件数の推移(MARR OnlineのWebサイトより)

M&A案件は、どれも一発勝負です。難しそうな計算をして買収価格を決めるようなものではなく、直感とタイミング(時にはハプニング)で決まることが多いです。今までに経験した案件から、少しお話します。

 

昨日から続いて四つ目は、異業種同地域間の企業の場合です。同地域の企業の場合は、双方の情報が周りからも入ってくるので、合意に至るまでの時間は短期間で済みます。

この事例では、売り手企業の一部の事業を切り出して譲渡することになりました。残りの事業は双方で業務提携をおこなって発展を目指します。実は、M&Aでは、全ての事業をまるまる譲渡するというほうが少ないだろうと思います。

 

五つ目も、異業種同地域間企業の場合です。実は、買い手企業は以前に売り手企業と同じ業種(技術)を手掛けていたことがありました。ある時期に経営的な判断から、その事業から撤退していたのです。事業環境は時間とともに変わっていきますから、一度は撤退した事業ですが再び魅力的な市場になることがあります。既に撤退から時間は経っていますが、当時の技術者も会社に残っており、設備もあります。

再びその事業を手掛けるために時間を掛けて準備するよりは、M&Aで時間を買ってその事業に再参入するほうが効率的と判断しました。

 

その他のケースでは、売り手企業が自ら自社情報を公開して買い手企業を見つけたというものもあります。M&Aでは秘密保持が最も重要だと思われていますが、完全な秘密保持をすれば何の情報も入りません。

むしろ、あっけらかんと情報を公開したほうが、よいタイミングでM&Aが成立する可能性が高まります。現在では、M&A案件を掲載したWebサイトも複数あります。

最大手の「TRANBI」というサイトでは、閲覧時点で2885件の案件が登録されています。

 

中小企業の場合、M&A(特に事業承継)では株式価値にばかり目が行きます。せいぜい、経営権・営業権くらいまでです。しかし、長く事業を続けている会社の価値は、それだけではありません。もちろん、誰にでもその価値があるわけではないのですが、ある買い手企業にとっては大きな価値がある可能性があります。

M&Aは一発勝負で時間を買う(売る)わけです。成功の鍵は、めぐり逢えるかどうかで、結局のところ「運」です。と言うと、身もふたもないですか?