日本の車検制度は明治19年(1886年)にはじまった

日本最初の自動車は明治31年(1898年)にフランスから輸入されました。変でしょ?

 

実は、日本の車検制度は、明治19年に内務省が制定した「乗合馬車取締規則標準」に遡ります。当時は全国の乗合馬車が広まっていたので、事故を防ぐために馬車は年に2回の検査が義務付けられました。検査は「新規検査」「継続検査」「構造変更検査」などがあり、馬車検査証に検印を受けるというルールも自動車車検と同じです。

 

眼鏡橋乗合馬車停車場(国会図書館アーカイブ)
眼鏡橋乗合馬車停車場(国会図書館アーカイブ)

日本の車検制度は今でも世界で最も厳しい部類に入るようです。

二大自動車大国のアメリカと中国では車検制度そのものがありません。欧州でも、イタリアやフランス、北欧の国々では厳密な車検制度は実施されていないようです。

日本に近い車検制度の国は、アジアでは台湾とシンガポールだけで、欧州ではドイツとイギリスくらいです。

 

日本は何にせよ規制の厳しい国で、国民もそれに慣れています。馬車の車検制度があったのは驚きですが、これ以前にも明治政府は明治4年に「馬車規則書」で馬車運送の基準書を交付しています。また「人力車渡世規則」というのもありました。

 

自動車の車検制度は、明治36年に愛知県が制定した「乗合自動車営業取締規則」が最初で、その後各県でも同様な規則ができました。明治40年に警視庁が「自動車取締規則」を出して、全ての自動車が対象となるよう広がりました。その後、大正8年に内務省が「自動取締令」を出して、それまで各県で規制していたものを統一しました。

 

その後、現在まで続く厳格な車検制度が国民の安全安心に果たした役割はとても大きいと思います。整備不良や違法改造などでの事故はゼロではないですが、車検制度のおかげでかなり少ない水準で抑えられています。

 

日本の自動車保有動向(自検協のWebサイトより)
日本の自動車保有動向(自検協のWebサイトより)

近年では、自動車そのものの品質が安定したことから車検制度は規制緩和が進んできました。一方で、ハイブリッド車や電気自動車など、新しい自動車技術が誕生し、AI導入による無人運転など技術の高度化も進みます。車検制度の変革も求められてくると思われます。

 

車検制度には自動車の寿命を短くするというちょっと困った問題がありました。

自動車の平均車齢や平均使用年数が延びているのは車検制度の規制緩和も一因です。

 

省資源という意味では自動車の寿命は長い方が望ましく、自動車の低燃費化が進んでいることから買い替えは低炭素化には好影響です。このトレードオフの関係を考えても、日本の自動車はまだまだ長く乗られてもいいと思われます。