給料は労働分配率を基準にして決める

従業員の給料というのは、いくらにするのが適当ですかと質問されました。

 

確かに同業者の給与水準とか、業界の標準に合わせて決めるというのは当たり前です。

しかし、会社が産みだす付加価値額からいくらを労働者に分配するかという目線で決めるほうが合理的ですし、従業員の納得も得やすいと思います。

 

給料袋
給料袋

従業員の給料ですが、最初に給料を含む労務費の総枠を決めることが大事です。人手不足だからとか、事業の拡大に必要な人材だからとか、理由はいろいろあるのですが、どんぶり勘定で高い給料を約束しても長く続きません。

 

中小企業に勤めようとする人は、その会社にあるいは経営者に何かの魅力を感じているわけです。

会社がその期待に応えるためには、そのときの給料だけでなく、継続して事業を続けていくなかでのトータルの処遇です。

 

基本的な考え方は、給料は労働分配率を参考にして決めます。労働分配率とは以下のようなものです。

 

最初に会社の売上高があります。この売上高から、原材料費・外注加工費・修繕消耗品費・水光熱費など、会社の外に支払った金額を引いたものが、その会社の付加価値額です。

例えば、年間1億円の売上高で外部に支払ったお金の合計が6000万円であれば付加価値額は4000万円になります。この付加価値額4000万円から労務費として使う金額の割合が労働分配率です。

ここで気をつけなければいけないのは、労務費とは給料だけでないことです。役員報酬、賞与、退職金、社会保険の会社負担(法定福利費)、通勤費、各種手当などを含む総額です。

 

労働分配率100%はあり得ません。会社の稼いだお金を全部労働者に配れば会社は運営できません。会社の性格や参加する業種によって労働分配率の適正値は大きく異なります。

仮に労働分配率を60%と決めれば、労務費の総額を2400万円に調整することになります。毎年の付加価値額は異なりますから、賞与や手当で調整します。

 

会社が仕事をするにはヒト・モノ・カネ・ジョウホウの4つが必要です。

労務費として分配した60%の残り40%からモノ・カネ・ジョウホウを調達します。例えば、機械やソフトウェアの購入などに15%分の600万円、情報調査に5%分の200万円を使うとします。カネの調達にどのくらいかかるかは会社によって違いますが、仮に年商の50%の5000万円を金利2%で借りていたら100万円です。

差し引きで700万円が経常利益です。経常利益率7%の優良企業ですが、この700万円にから税金を納めますから残るのは500万円弱です。

 

労働分配率を適切に設定して示すことができれば、従業員には納得してもらえるし、働くモチベーションも高まります。

ここで大事なのは、60%と決めたらそれをできるだけ守ることです。特に業績が予想以上に良かったときなどは、賞与を支給してきっちり60%にすることです。そうすれば、何かの事態で業績不振になっても会社の運営はスムーズにいきます。