営業・販売担当者は顧客である販売先のことを微に入り細を穿つように知ろうとします。
これに引き換え、特に製造業では、購買・調達担当者が原材料や部品の仕入先の事情に興味が薄いことがよくあります。経営者も購買部門の出身でもなければ、お客様やその先の市場の方には重きを置いていても、仕入先や委託先を軽んじているような人が多いです。しかし、会社の経営にとって仕入先は顧客と同じかそれ以上に重要なのです。
「お客様は神様」と言いますが、自社で出来ないモノやサービスを提供してくれる仕入先・委託先は「仏様」です。
そんなの”ほっとけ”とは言えない、大切な存在です。ほとけの語源は諸説ありますが、この場合は”保(守り)解く(教える)”というのが適当でしょう。
購買・調達の担当者は仕入先・委託先を仏様の拝むように、しっかりと細かいところまで知り尽くすことが大事です。経営者も、感謝のこころで接しながら、仕入先・委託先の状況をきちんと掴んでおくのです。
購買・調達の担当者のなかには、書類の間違いが無いかを確認して、ハンコを押すのが仕事なんて思っている人が何と多い事でしょうか? 流れ作業で、見積書だけを見ては「前回より高いな~、A社は○○円って言ってるよ。うちの査定では××円なんで、よろしく!」なんていう訳の分からない担当者もいます。
そんなとき、委託先から突然、「担当者さん、私も年もとったので引退することにしたよ。息子は海外で働いていて、後継者もいない。これまで、ありがとう。来月で仕事を止めるので、後はよろしく。」と言われて、青くなっても遅いです。
代わりの委託先なんか、そう簡単にはありませんから、会社の経営そのものに危機が到来です。経営者が担当者をいくら叱責しても後の祭りです。
担当者が伝票をみている仕入先・委託先が100あっても、大事な1つの部品の供給が止まれば製品はできません。よほどの汎用品は別として、製造業の購買。調達担当者は全ての仕入先のことをよく知ることが大事です。
このよく知るというのは、会社の表面的な業績とか生産能力に止まりません。社長の性格とか個人的な趣味、家族の様子、地域の評判など、あらゆることに及びます。
SCM(サプライ・チェーン・マネジメント)なんて、かっこつけて言っていますが、会社の事業が継続するかどうかは、仕入先・委託先のことをどれだけ知っているかにかかっています。購買・調達部門の重みを、経営者が本当に理解できているかは、会社の重要な評価項目です。