逆輸入されたBCP(事業継続の精神)

頻繁に発生する水害や地震などで、改めてBCP(事業継続計画)が見直されています。

 

BCPの「会社を永く続ける」(長くではなく“永く”)という考え方は、日本ではむしろ当たり前のことです。ところが、欧米を含む日本以外の国や地域では、会社の事業継続への関心が以前はとても低かったのです。

☞ BCPの導入 「ワライト版 中小企業のBCP」

 

三菱発祥の地:土佐稲荷神社(Wikipediaより)
三菱発祥の地:土佐稲荷神社(Wikipediaより)

日本のように、江戸時代(あるいはもっと古く)から続く長寿企業がたくさんある国はありません。260年もの長期間、平穏に続いた徳川幕府の政権には事業継続のノウハウが山盛りです。

 

近世において、日本以外の国では、国を支配する者が頻繁に入れ替ります。他国や場合によっては異民族に統治されるようなことも頻繁におこりました。

アメリカとイギリスで、事業継続に対する関心が高まってきたのは、第二次世界大戦の終結から30年を経て、国際社会が安定の度合いを高めていた1970年代にはいってからのことです。その後、20世紀の終盤にかけて、事業継続計画をつくろうという動きは他の欧米先進国へと少しずつ広まっていったのです。

 

事業継続計画(BCP)という考え方は、2001年に起こった9.11同時多発テロ事件がきっかけにして、急に大きくなりました。さらに、アメリカでは2005年のハリケーンカトリーナの襲来がBCP策定を大きなトレンドにしました。

 

日本では、2005年から2006年に掛けてこのBCPが輸入されて、ちょっとしたBCPブームになりました。当時は、阪神淡路大震災(1995年)や新型肺炎SARS(2003年)などの記憶が鮮明であり、これらを思い出しながらBCPを策定しました。この時点では、BCP策定は、まだまだ大企業に限られていたように思います。

 

そして2011年に東日本大震災という未曽有尾の大事件が発生します。震災復旧の過程で、中小企業を含む多くの企業がBCPの導入をおこなうようになりました。しかし、実際に有効なBCPまで作り上げられた会社は少ないようです。

 

それは遭遇した大震災の規模が余りにも大きくて、神ならぬ身では有効(完璧)な手立てが見当たらないと、諦めてしまったということもあります。また、こんな大災害は企業の手にはとても負えないので、国に任せた方がいい(任せるしかない)という気持ちにもなりました。

しかし、事業の継続を脅かすような事象は、いつ・どこででも起こりえます。その事象も大震災に限ったことではありません。

 

今では、当社だけは事故や災害には無縁(だろう)という無駄な楽観をしている経営者はいないでしょう。人は自然に逆らうものじゃないと考える経営者でも、現代の気象災害の根本原因に人間が関わっていることは知っています。

 

事象が発生する以前に、自社のBCPを検討して作成して保管しておくことは、存外重要なのです。そして、BCPを作成する過程で、経営者にも従業員にも力がつくのです。

そもそも事業継続は日本人の本質です。ご先祖様から代々引き継がれていた考え方ですから、逆輸入されて横文字になりましたが、堂々と取り組んでいきたいものです。