今どき、儲かるから省エネ投資するって中小企業は少ない

中小企業に地球環境問題や社会的責任を問うても響かないという時代錯誤を聞いてビックリ!

 

今どき、中小企業に対して「儲かるから省エネ投資を!」とすすめるのはいかがなものだろうか? そもそも、中小企業レベルでは省エネ投資に経済合理性は乏しい。積極的に実施している企業は社会や環境に対する意識が高い企業なのです。

 

お金のための省エネ?
お金のための省エネ?

私が、省エネ投資に消極的な中小企業に、「儲かるから省エネ投資しろ!」と言わないのには、3つの理由があります。

 

1つは、多くの場合、省エネ投資は金額が大きくなるので新規調達が必要になることです。投資採算性も、エネ合の補助金で1/2か1/3を出してもらったとして、やっと検討できます。

投資金額が大きくて投資回収期間が長い(少なくとも5年とか10年はかかります※)ので、長い先が見通せないことの多い中小企業は二の足を踏みます。

 

ちなみに、業者の試算を鵜呑みにしてはいけません。こんな提案があったので、検討してくださいと資料のチェックを依頼されることがありますが、エネルギー保存の法則に反するような突飛な数字が書かれているようなケースが多いです。

 

※これは一般論です。常時点灯の水銀灯をLED灯に替えるなどのケースでは投資回収期間は3年未満になることもあります。

 

2つは、投資の優先順位は、いつも劣後になることです。よく、省エネで儲けた金は売り上げの要らない利益だという説明をする人がいます。営業利益2%の会社なら、省エネで儲けた50万円は2500万円の売り上げに相当するというお話です。

 

じゃぁ、2500万円の売り上げを棄てて、50万円の省エネに取り組むという経営者がどこかにいるでしょうか?もし、本気でそう思っている経営者ならその会社は続きません。(方便で、社員に対してそう言っている経営者も多いので、それは別です。)

利益は、第一に売上から上げるのです。簡単に言えば、競争しているビジネスの世界では、強い会社が生き残るのです。売上高を上げるための投資が優先されるのは当然です。

 

3つは、エネルギーを取り巻く環境が短期間に大きく変動することです。電力価格が大幅に上がったと思ったら急に下がってみたり、再生エネルギー(太陽光発電)は買取価格が急落したり、新電力の経営状況に変化があったり、補助金の制度が毎年変わってみたりします。省エネ技術も新しいものが出てきて、今導入するのが得か、もう数年待ったほうがいいのか、悩ましいところです。

 

そんななかでも、省エネ投資に積極的に取り組んでいる中小企業はたくさんあります。その動機は「儲かるから」という単純なものではありません。

現在の中小企業にとって、儲けよりも地球温暖化によって1年に何度も襲ってくる異常気象のほうがよほど大きな問題です。また、地域と密接な相互関係を持っている中小企業は、大企業以上に環境保全や自然保護の意識が高いのです。

 

中小企業の省エネ投資は、経済合理性よりも社会や環境に対する合理性でおこなわれます。そして、省エネ投資は中小企業に信用や信頼という無形の自己資本を蓄積させます。実は、少々のキャッシュとは比較ができないくらい大きい事業のエンジンになります。

さらに、会社が社会や環境に貢献するという姿勢を明確にすることは、現代の中小企業の最大の課題である人材の確保にも確実につながっていきます。

そうして、長く続く会社になってはじめて、省エネ投資は元が取れて「儲かる」「儲かった」ということになります。う~ん、なるほど、結局、省エネ投資は「儲かる」ってことです。