障害者雇用の水増しには少し同情

中央省庁や自治体で障害者雇用の水増しが相次いで発覚しましたが、少々同情します。

 

障害者の法定雇用率を維持するのはとても大変です。現在は、民間企業は2.2%で、国や自治体は2.5%というルールがあって、これに満たなければ納付金を納入し、超えていれば助成金の給付があるという制度です。

 

障害者が働く
障害者が働く

障害者雇用の最大の問題は、求職している障害者が少ない、もっと言えば働きたい障害者の数が少ないということです。

そして、意外に知られていない次点の問題は、障害者であっても手帳を取らない人も多いという点です。これは、理屈上はありえない(もらうメリットはあっても、デメリットはない)のですが、実際には結構います。

 

私の関わっている建設会社の例ですと、法定雇用率を満たすには3人の雇用が必要で、以前はちょうど満たされていました。そのうちの一人は人工透析を受けていた方ですが、事情があって退職することになりました。その方は技術設計を担当していましたが、普通に現場での仕事もこなしていました。

そこで、代わりの障害者の方を雇用しようと探すのですが、なかなか見つかりません。もちろん、技術設計の方を募集したわけでなく他の業種(建設会社の仕事の範囲内ですが)でも構わないわけです。かなり長期間探して、オスメイトの方が見つかる幸運がありました。

 

さて、対象となる障害者(18歳以上65歳未満)は、全国に355万人です。平成28年6月。

このうち、身体障害者が111万人・知的障害者が41万人・精神障害者が202万人です。

この時点の日本の雇用者数は5870万人ですから、355÷5870=6%となります。これなら、法定雇用率2.2%(民間)は容易に達成できそうです。

 

しかし、民間企業の雇用率実績は1.92%(従業員56人以上の事業所)です。

内訳は、身体障害者33万人・知的障害者11万人・精神障害者4万人となっています。つまり、障害者のなかで最もボリュームがある精神障害者を雇用するのはなかなか難しいのです。

 

結果として、身体障害者や知的障害者が取り合いになっているのが実情で、中小企業はどうしても大手企業にこの採用競争で競り負けます。ちなみに、(111+41)÷5870=2.6%となります。

 

したがって、企業が法定雇用率を守るためのこれからの方策としては、精神障害者の働く場の確保が大きなテーマです。これも中小企業には、結構高いハードルのような気がしますが、やらなくちゃいけない以上、先駆けて成功すると大きなアドバンテージになります。

研究してみましょう。