”いじり壊し”の善悪は正確にはわからない

加山雄三さんの光進丸が火災になりました。前日に点検を受けていたということです。

 

ポンプのメンテナンス
ポンプのメンテナンス

初めて管理職になったときに着いたポジションは、工場の設備保全課長でした。

当時、工場では1月か2月に1度の頻度で”メンテ日”として、工場設備を部分的に停止して定期メンテナンスをしていました。重要機器の点検、消耗部品の交換、注油や更油、付着などの除去をおこなっていました。

複数の工程があるので、毎週2日くらいの頻度で”メンテ日”を設定することになります。

工場全体を停止して実施するSDM(Shut-Down-Maintenance)工事とは別のものです。

 

この最初の頃にいわゆる”いじり壊し”が何件か続けて発生しました。これは、部品交換をしたのだけど部品が不良だったとか、交換作業でコンディションが変わって直ぐに故障したとかの事例です。

こういう事態が起こると、製造部門からは強く叱責されます。忙しいところを、わざわざ機械を停止してメンテナンスをおこなったのに、逆に故障が発生したのですから、怒るのももっともです。

 

ただ、ここで難しいのはメンテナンスをしなければ、翌日に突発故障が発生して工場の大規模休止に発展していたかもしれないわけです。

事前に点検をして、部品交換までの余裕が正確にわかればいいのですが、現実的ではありません。もちろん、状態保全を目指して、マシンチェッカーを使っての振動調査などにも挑戦していましたが、故障のリスクが小さいという証明は困難です。

 

もちろん、地道に、分解・点検・手入れ・再組立てにおけるポイントと注意事項を確認しておくことは重要です。保全作業全般における注意事項を徹底することや、試運転の手順を事前にシミュレーションして、”いじり壊し”がおこらないようにすることは重要なことです。

ただ、過度に恐れて設備に手を入れないことは、危険を増大します。

 

「そんなことはしなけりゃよかった」ではなく、どんな活動でも、一定の割合で失敗のリスクはあるのだと理解しておくことも大切です。