主而忘身 国而忘家 公而忘私

中国・前漢時代の思想家、賈誼(かぎ)が、皇帝に上奏した言葉です。

 

日本列島の夜
日本列島の夜

秦の滅亡後に劉邦が興した漢は、中国を統一することに成功しました。しかし、長く続いた内戦で国内は疲弊しており、皇帝の力は未だ確かではなく、諸侯の力は強くて専横がはびこり、異民族は国境をしばしば侵し、社会は混迷していました。

 

第三代皇帝となった文帝の統治基盤も脆弱なままでした。博士の一人であった賈誼(かぎ)は、「治安策」としてまとめ、文帝に提案します。

 

そのなかに書かれているのが、「主而忘身 国而忘家 公而忘私」という言葉です。

「主人のために我が身の利益を忘れ、国のために家の利益を忘れ、公共のために私の利益を忘れる」ことを説いています。

 

こういう教えを頭っから批判する人も多いと思います。しかし、我が身の利益のために主人を引きずり下ろし、自らの仲間のためには国がどうなっても構わないと暴れ、私的な満足のために公共の福祉を犠牲にするのが、良いわけはありません。

 

英邁な文帝は、疲弊した国を立て直し、農業生産を増やす政策を実行しました。文帝の時代に、漢は社会的な安定を獲得し、次の景帝が経済再建引継ぎ、更に武帝が前二代の蓄積を以って異民族を撃退します。ここに漢は、全盛を迎えることになります。