世界は(地球は)日本に原発ゼロ法案を求めてはいない

小泉元首相・細川元首相が「原発ゼロ法案」を野党各党に提案したそうです。世界が日本に期待しているもの、地球が人類に求めるものとは逆行しています。

 

地球:持続可能な発展のために・・
地球:持続可能な発展のために・・

原発ゼロ・自然エネルギー100%という提案は、論理的でも、倫理的でもありません。

 

自然エネルギー100%を免罪符にしても、自然エネルギー(再生可能エネルギー)の過剰な導入は、自然の再生までにかかる時間を考慮すれば、持続可能性がありません。また、地球温暖化と共に現在の地球が抱える二大課題の一つである生物多様性を損ないます。

 

世界が日本に何を求めているかは、IEA(国際エネルギー機関)による日本政府への勧告がよく表しています。

日本が原発ゼロを掲げても、地球上には原発が増えていきます。欧米日ではエネルギー消費が減少しますが、インド・中国・アフリカなどで増加していくエネルギー需要を止めることはできません。

世界が、地球が、日本に求めているのは、原子力発電に対する技術を現に持っていて、将来も研究開発することが可能な日本が、世界最高水準の安全性を確立させて、低炭素の電力源である原子力を制御していくことです。

 

Energy Policies of IEA Countries 2016Review - 経済産業省

 

<主要な勧告>

 日本政府は下記を実施すべきである。

 

1. 安全性、安定供給、経済効率、及び環境保全を考慮し、再生可能エネルギー、 原子力エネルギー及び高効率火力発電を含むバランスの良い多様な エネルギーミックス 実現に向けて努力する。

 

2. 2030年目標を達成するとともに2050年目標に向けて継続していくためにあらゆる施策をとる。ここには下記を含む。

◆ 安全、コスト、社会受容性に対応しつつ、一次エネルギー及び電力供給における低炭素源の増加を促進する。

◆  エネルギー効率向上のため、財政優遇措置と基準の引き上げ段階的に導入することを継続する。

◆  実績があり有望な日本の低炭素技術革新ポテンシャルの引き上げを意欲的に推進する。

◆  予定通り電力及びガス市場改革を完遂する。規制当局と競争当局に十分なリソースを与える。特に電力については、良く統合された全国的送電網を作るためのインフラの構築を促進するとともに、 システムにとって最も価値の高い地点での発電を実現するための強いシグナルを送ることを含めた市場の設 計を促進する。

 

3.  再生可能エネルギーの導入支援を継続し、下記に重点を置く。 

◆  支援コスト による消費者の追加料金負担をントロールし、 支援水準を国際的な水準に合わせる。

◆  支援の実効性を高め、技術の進歩に合わせて定期的に見直す。

◆  技術的・地理的にバランスのとれたポートフォリオの展開を促進する。

◆  送電網の統合を加速するため、中立的な制度を導入する。

 

【日本への提言】

世界の経済大国の一つである日本は、長い間エネルギーの消費大国及び輸入大国であり、エネルギー技術開発において世界的に認 められた先駆者である。日本のエネルギー政策は近年、2011年の 東日本大震災とその後の原子力発電所事故からの克服に向けた 取組が中心となっている。事故の結果、全ての原子力発電所が次々に停止したことに伴い、大幅な化石燃料使用の増加、燃料輸入の増加、二酸化炭素排出量の上昇を招き、持続不可能な電力料金水準をもたらした。

 

これらの課題に直面する中、日本政府は近年、エネルギーミックス の更なる多様化(化石燃料使用の低減、再生可能エネルギーの増加、安全性が確認された原子力発電所の再稼働)及び二酸化炭 素排出の削減を進めるため、エネルギー政策を見直した。これらの計画の策定にあたり、日本は温室効果ガス排出量を2013年から2030年の間に26%削減する野心的な目標を示した。

 

この排出量削減の公約は、エネルギー安全保障、経済効率性、環境保護、及び安全性のバランスを取ることを求めている。このIEAによる日本のエネルギー政策詳細審査は、その成功に不可欠となる、省エネルギー、再生可能エネルギーの増加、原子力発電所の 再稼働の三つの分野に焦点を当てている。IEAは日本に電力供給における低炭素電源を増加するよう勧める。また、原子力発電所は、最高の安全基準を満たしていること、及び事故後の重要な問題、すなわち、放射性物質の放出による影響を受けた地域の除染 と国民の信頼回復などが対処されることによってのみ、提供が可能であるものと認識している。

 

この詳細審査は、日本が直面しているエネルギー政策の課題を分析し、更なる政策改善のための提言を行うものである。より安定的、持続可能かつ安価なエネルギーの将来に向かう日本の一助となることを目的としている。