人手不足の逆説

昨今では、どこの事業者さんも口を揃えて「人手不足」を嘆いています。

 

エッシャーのだまし絵(無限階段)
エッシャーのだまし絵(無限階段)

人手不足はちょっとだまし絵のようなものです。少し極端ですが、有名なパラドックスに・・

大前提「60人で仕事をやれば、1人でやるより60倍速く片付けることができる」

小前提「その仕事は、1人でやると1分(60秒)かかる」

結論「その仕事を60人でやると、1秒で完成する」

 

どうですか?

もちろん、こんな結果にならないのは自明ですが、じゃぁどこが間違っているのでしょうか?私たちは何に騙されたのでしょうか。

 

先ず、小前提は事実を述べているので正しいです。したがって、大前提が間違っています。

「60人で仕事をすれば、1人でやるより、60倍の仕事ができる」なら、ギリギリですが正しいと言えます。60倍の仕事を60分の1の時間としたのが、間違いなんですね。

 

但し、これは極端な例なので間違っていることが直感的にわかるわけですが、日常の仕事では気づかないことがあります。

 

3人で仕事をしている作業所があって、3人が毎日4時間残業しても、注文の1/4をこなせないで困っているとします。仕事を全てこなすために必要な人員を計算してみると、以下のようになります。

今の仕事時間は、3人×(8+4)時間=36時間。これで需要の3/4しかこなせないので、必要な時間は、36時間×4/3=48時間。48時間÷8=6人。

「新たに3人加えて、6人で仕事をすればよい」という結論になるかどうかは、よく考える必要があります。現在の3人が相互に何も関係しない作業を黙々とこなしており、必要なだけの設備や作業場所が全て確保されているなら、もしかするとその通りかも知れませんが、普通はこうはなりません。必ず、何かの作業上での干渉があったり、需要が変動したり、作業内容が変ったりもします。

 

人手不足の解消法には、必ずしも人手を増やしていく策以外にも、いろいろな方法があります。事業者の特性に沿って、最も適切な現実的で実行可能な方法を考えていきましょう。