2000年の悩みも異分野の知識で解決できた

ギリシア時代から多くの数学者を悩ませていた3大問題が解決したのは19世紀後半でした。

 

古代ギリシアの数学界で関心を集めていた3大作図問題というものがあります。

①任意の角の三等分を作図する。

②与えられた立方体の二倍の体積を持つ立方体を作図する。

③任意の円と等積の正方形を作図する。

この問題は2000年以上解決されないままになっていました。

 

例えば、①の「任意の角の3等分」ですが、直角(90°)なら下のように簡単です。

 

二等分は小学校で習います。四等分は二等分を2回繰り返すと描けます。

三等分は円弧を引いて、直線との交点から同じ半径で円弧を引きます。円弧の交点と原点を結ぶと三等分線です。

 

直角ならば簡単な三等分ですが、任意の角では描くことができません。

任意の角θの三等分の作図は、(cos1/3θ,sin1/3θ)が作図可能であるかという問題に帰着できます。

cosの三倍角公式より、

cosθ=4cos^3(1/3θ)ー3cos(1/3θ)  

cos(1/3θ)=xとして変形すると

4x^3-3x-cosθ=0

となります。

cosθは任意の定数なのでxについての三次方程式の形になりました。

三次方程式の解の一般解には、三乗根が含まれています。

 

詳しい説明はできないのですが、

座標軸上の点が定規とコンパスのみで作図可能である条件は

① (x,y)成分がともに有理数である場合(わかりやすい)

もしくは

② (x,y)成分が有理数に√(平方根)を有限回使って表現できる数である場合

に限られるということが、代数学で証明されたのだそうです。

 

つまり、数値にnやeなどの超越数や三乗根が入ってしまうと作図できないわけで、任意の角の三等分線は引けないということが証明されたわけです。

 

同様に、ギリシャの3大作図問題は多くの人の頭を2000年間悩ませた末に、19世紀後半になって「できない」ということが証明されたということです。

 

これを、「下手な考え休むに似たり」と考えるべきではありませんね。

「幾何学的に考えると千年以上解決できなかった問題を、代数学という視点を使うことで解決することができた。」つまり、”異分野の考え方を導入することで、思わぬ新しい解決法が見つかることがあるという一つの例である。”と考えるべきでしょう。 

 

最後に、現代のコンピューターが発達した世界では、ギリシャの3大問題は提起されない可能性が高いそうです。

三等分線をどうやって描くかを考える必要なんかなくて、二等分線を繰り返し描いていけば限りなく三等分線に近い(理論的には三等分線)線が描けるからという理由です。

1/3は,初項が1/4で公比も1/4の無限等比級数の和になります。

(1/3=1/4+1/16+1/64+1/256+・・・)

ちょっと味気ないですかね?